仏滅に、流路を射た

 乗車後、座る場所を確保した。扉が閉まり、電車が動き始めた。同時に本を開いた。失われたものの伝説(の第三部)の続きを読んだ。いよいよ冒険が本格化し、迫真のダイブ場面が展開する。リアルな描写の数々は、作者自身の経験が反映されたものだろう。でなければ、ここまでは書けない。


 終点下車。駅を出て、職場まで歩む。途中、カフェに寄った。レジに行き、バームクーヘンとコーヒーを買った。空いている座席に座り、前者と後者を交互に腹におさめた。

 その後、池波正太郎の『ドンレミイの雨』(新潮文庫)を再読した。何度読んでも面白い本である。我が愛読書のひとつだ。記すまでもないが、ドンレミイとは、ジャンヌ・ダルクが生まれた村の名前である。

 俺も池波先生のような文章が書きたいと常々考えているが、実現する前に生涯の終りを迎えることになりそうだ。思考は、万人に与えられた平等の自由であるとは云うものの、そのような大それた願いを抱くこと自体が不遜な行為のような気もする。


 午前業務終了。食堂に行き、券売機でAランチを買った。今日のAは肉豆腐。使用されている肉の正体についての詮索はあえて避けるが、歯応え充分で、顎の運動には最適であった。だがやはり、量が少ない。今日もまた温泉卵の力を借りることになってしまった。食後、茶碗に氷水を注ぎ、一気に呷った。喉に快感が走る。気温の影響もあるのか、水が妙に旨い。


 休憩室に行き、ドンレミイの続きを読んだ。読後、十分ほど仮眠。眼を覚ますと、室内がざわついていた。静寂の時間が破られる兆しであった。愉快なお喋りが始まる寸前に席を立ち、その場を離れた。〔27日〕


[シンカワメグムさんのコメント]

カフェでバームクーヘン。またおサレ朝食ですな!~(*‘ω‘ *)

ここ数年で、何だか高級感のあるスイーツに格上げされたような気がする…

昔は個包装されたバームクーヘンが、煎餅と共にお茶請けになっていたのに。

切り株ような断面を、しばらく眺めてしまうという癖が昔からございます。

同じ味を何層にも重ねる意味が…とか思いながらもいつも美味しく完食です。


ドンレミイの雨。オウ。素敵。本日は読書もおサレ。

池波正太郎と言えば鬼平犯科帳が代表作ですが、エッセイも良いですよね~

35年以上前の海外旅行。ケータイも無ければナビも無い。でも

池波先生はどこへ行っても池波先生。泰然。ご夫婦も面白いですよね~(´艸`*)

先生の穏やかな語り口と、素敵な画像たちに癒されます。(*´▽`*)

闇塚さんの文章にも、池波先生の風がふんわり薫って良いですぞい~(/・ω・)/


歯ごたえのある肉豆腐!ほ、本当になんの肉…!?((((;゚Д゚)))) 


[闇塚の返信]

作品として素晴らしいのは勿論ですが、随筆を書きたい人にとっては、最高の教科書だと思います。


先生の絵を題材にしたポストカードが、浅草の記念館で販売されていました。これはいい!と心中で叫びつつ、買わせていただきました。

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