第158話 犯人は君だろう?
「こ、これは……!?」
「被害者の死体を引き上げた兵士の報告書さ、その書類は写しだけど内容は事実だよ」
「えっ!?」
ロウガは兵士が引き上げた死体の資料が記された調査報告書を確認し、その内容を見て驚愕する。その内容は昼頃に引き上げられた死体には傷跡の類は存在せず、死因は溺死である可能性が高いと示されていた。
死体の胴体には錘を括り付けた縄が取り付けられ、そのせいで死体を引き上げる際に時間が掛かったという内容も記され、死体を引き上げるためには縄を斬るしかなかったという。
死体には身元を証明するような類の物は身に付けておらず、兵士達も死体の正体が何者かを捜査している旨も記されていた。その内容を確認してロウガは信じられない表情を浮かべ、どうやってこの報告書を手に入れたのかをレノとアルトに問い質す。
「これはどういう事だ……どうやってこの調査報告書を手に入れた!?」
「簡単な話さ、僕は元貴族でね。前にこの街の警備兵が難航していた事件の調査を手伝った事もあるんだ。それでこの街の警備兵とは顔見知りでね、死体を調べてみたいと頼んだらあっさりと見せてくれたよ」
「では、この報告書の内容は本当なのか!?」
「嘘じゃないさ、流石に調査報告書の写しを持っていく時は苦労したけどね、ここにいるレノ君は特別許可証を見せてくれたらあっさりと渡してくれたよ。そこに掛かれている内容はこの街の警備兵が書き記した本物の資料だよ」
「う、嘘だ!!出鱈目を言うな!!団長、こんな奴等の言う事を信じないでください!!」
ヒデミツは焦った様子でレノとアルトが持ち込んだ調査報告書を魅入るロウガに訴えかけるが、その内容を確認したロウガはレノに顔を向ける。
事前に彼を調べた際に国が発行している特別な通行許可証をレノが所持しているという話は彼も聞いており、わざわざ自分の元に偽物の調査報告書を持ち込むような真似をする理由がない。
「そもそも君達の方もどうして死体が引き上げられたのだと知ったら、警備兵の元に赴いて死体の確認を行おうとしなかったんだい?」
「それは……」
「言わなくても察しが付くよ、そこにいる目撃者を語る男が上手く誤魔化したんだろう。被害者を殺したのはレノ君のせいにして、責任をレノ君に擦り付ける事で被害者の死体の確認を行わせる前にレノ君の調査を行った。違うのかい?」
「ヒデミツ……貴様!!」
「ひいっ!?ま、待ってください!!」
アルトの言葉が図星だったのかロウガは怒りを抱いた表情でヒデミツを睨みつけると、その迫力にヒデミツは腰を抜かし、後退る。その反応を見てレノはキバを殺した犯人が目撃者であるヒデミツなのかと驚く。
「まさか、本当にキバを殺した男はこの目撃者を語った男なの?」
「全て自作自演なんだろう?自分が殺した後、その罪を殺された被害者に恨みを抱いていた人物、つまりここにいるレノ君に擦り付けて自分は目撃者として団長に彼を疑うように仕向けたんだろう?」
「答えろ、ヒデミツ!!」
「ち、違うんです!!俺が殺したんじゃないんです!!」
ヒデミツは観念したのかその場で土下座を行い、本当に自分の団員がキバを殺した事に関与している事を知ったロウガは唖然とする。だが、ヒデミツの話はそこで終わらず、彼はどうしてキバを殺すまでの経緯に至ったのかを話す。
「あ、兄貴が悪かったんです!!団長から降格を言い渡された後、弟分だからって俺を無理やりに引き連れて傭兵団から抜けようとしたんです!!俺は嫌だと言ったのに従わなければ殺されると脅されて……」
「それで殺したのか!?」
「ひいっ!?ち、違う!!俺達はやっていません、俺達は……」
「俺達は、という事は被害者を殺したのは別の人間がいるという事か」
キバに脅迫されたヒデミツは彼の弟分であるが故に無理やりに傭兵団を脱退されそうになったが、そんな時に彼の前に男が現れたという。その男はヒデミツに取引を持ち掛けた。
「揉めていた俺達の前に男が現れたんです、そいつはキバの兄貴を後ろから薬で眠らせると、俺を脅してきて……従わなければ二人とも殺すって」
「それでお前はどうした……!!」
「だ、だってしょうがないじゃないですか!!下がなければ兄貴の代わりに俺が殺されていたんですよ!?協力者は一人で十分だからって、そいつは兄貴を殺して川に沈めたんです!!その後、俺が目撃者のふりをして他の奴に犯人に仕立て上げれば疑われるこ事はないって……だから、俺はそれに従っただけなんですよ!!」
「この……裏切り者がっ!!」
ロウガはヒデミツの話を聞いて我慢できずに彼の顔面を掴み、勢いよく机に叩き込む。その結果、額と鼻から血を流しながらヒデミツは白目を剥き、床に放り出される。その様子を見てアルトはため息を吐き出す。
どうやらヒデミツは利用されていたらしく、キバを殺した犯人は別に存在する事が発覚した。それでも犯人の片棒を担いでいた事に間違いはないため、ロウガは許す事は出来なかった。
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