第138話 連戦試合開始!!
「うわぁっ……あの人、大丈夫かな。でも、生きているならちゃんと治療されるのか」
「おや、どうかされましたか?試合の準備は整いましたが……」
兵士達に運び込まれる負傷者を見送ると、すぐに迎えの兵士が訪れた。兵士は自分が入る前に待機室から出てきたレノに疑問を抱くが、次の試合のためにレノを迎えに来たことを伝える。
まさかこんなにも早くに迎えが来るとは思わなかったが、レノは気合を込めるように頬を叩くと、兵士の案内の元で試合場へと向かう。
(確か、ゴブリンが銅貨1枚、コボルトなら銅貨8枚、オークなら銀貨3枚、ボアなら金貨1枚、赤毛熊が金貨3枚、最後にトロールが金貨5枚か……でも、観客の話によると最終試合の相手は赤毛熊の亜種らしいから、運が良ければトロールとは戦わずに済むかも)
試合場の掲示板に張り出されていた魔物の金額を思い返し、目標金額の「金貨5枚」を手に入れるには相当な数の魔物を倒さなければならない。ボアを相手にしたとしても最低で5匹は倒さなければならず、昼間に遭遇した「山の主」と言われたボアと戦う可能性もある。
(まあ、やれるだけやってみるか……)
荒正を手にしたレノは兵士に連れられるまま遂に試合場へと辿り着く。観客席にはアルトの姿が存在し、彼はレノに気付くと軽く腕を振る。そんなアルトにレノは頷き、試合場へと移動した。
「試合の間は金網は鍵を施しますのでご注意ください。試合の途中で棄権を申し込みたい場合、試合場の傍で待機している我々に伝えてください。但し、我々が試合場に入るまでに時間はかかりますので危険を知らせたからと言って安心してはいけません。我々が魔物を抑えつけるまでは気を抜いてはいけませんよ」
「肝に銘じておきます……」
「ではご武運を……準備が完了したぞ!!」
「よし、魔物を運び出せ!!」
案内した兵士が合図を出すと、すぐに兵士の集団が檻を運び出し、金網へと移動させる。檻の中には「ゴブリン」が閉じ込められ、合計で4匹ほど存在した。
『ギィイイッ……!!』
「では試合を開始致します!!準備はいいですね!?檻を解放しますよ!!」
「よし、開けっ!!」
兵士達は檻を開いた瞬間、中からゴブリンの群れが出現する。それを確認したレノは荒正を引き抜くと、ここでゴブリン達の姿を見てある事に気付く。
野生のゴブリンと違って闘技場で解放されたゴブリン達は人間のように武器と防具を身に付けており、随分と小汚くて刃毀れしているが短剣を握りしめていた。他にも円形型の盾を装備しており、中には革製の胸当てを身に付けている個体も存在した。
(なるほど、捕獲したゴブリンに武器と防具を装備させて戦うのか……最弱の魔物でも武装させる事で強化させているのか)
闘技場側も簡単には選手側が勝たないように工夫しているらしく、魔物に武装させた状態で戦わせるという魂胆にレノはため息を吐き出す。ゴブリン達は姿を現すとレノを即座に取り囲み、笑みを浮かべる。
(さてと、どうしようかな……ゴブリンぐらいまでなら魔法剣を使わなくても十分だと思うけど、武装していると厄介だな、ここは一気に終わらせるか)
自分を包囲したゴブリン達に視線を向け、荒正を握りしめたレノは敢えて隙を見せるように剣を下す。その姿を見た瞬間、ゴブリン達は一斉に襲い掛かった。
『ギィイイイッ!!』
「……円斧!!」
四方から同時に飛び掛かってきたゴブリンに対してレノは剣を振りかざすと、先端に風の魔力を集中させて一気に噴出し、加速した刃を振り抜いて円を描くように振り抜く。
レノに飛び掛かろうとしたゴブリン達の胴体に加速した荒正の刃が通過し、身に付けていた革製の胸当てごと胴体を切り裂かれ、地面に倒れ込む。その光景を見た観衆と兵士達は呆気に取られ、アルトは拍手を行う。
「ふうっ……終わりましたけど?」
「えっ……あっ、勝者レノ選手!!」
「う、嘘だろおい……あんなガキが一瞬でゴブリンどもを!?」
「しかも一太刀で終わらせたぞ!!」
「何だ、今の剣技は!?まさか、戦技か!?」
兵士にレノが声をかけると彼は慌てた様子で勝利宣言を行い、遅れて観客たちも騒ぎ出す。その様子をアルトは嬉しそうな表情で見つめ、友人の活躍を他の人間が驚く様は見ていて気分が良かった。
すぐに試合場に運び込まれたゴブリンの檻は外へと出されると、急いで兵士達はたらしい魔物が閉じ込められた檻を運び込む。今度は予想通りというべきか「コボルト」が閉じ込められた檻が運び出され、今度の檻には3体のコボルトが捕まっていた。
「ガアアッ!!」
「ウガァッ!!」
「うわっ!?くそ、暴れるな!!」
「下手に鉄格子に近付くな!!腕を噛みつかれるぞ!!」
「檻の鍵を開けたらすぐに離れるんだ!!」
コボルトの入った檻を兵士が運び込むと、その様子を見てレノは荒正を握りしめ、今度の敵は最初から魔法剣で仕留めなければまずい相手だと判断し、準備を整える。
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