漫才師

弱腰ペンギン

漫才師

「いらっしゃい、ここは武器屋だよ」

「……武器屋」

「おう。武器屋だぜ」

「……コンビニじゃねえの? さっきテロレロレロンって入店音が」

「武器屋だぜ」

「……武器屋」

「あぁ。武器屋だぜ。だって、剣とか売ってるだろ?」

「……そうね。弁当も雑誌もないね。剣と盾が売ってるね」

「な、武器屋だろ?」

「武器屋は盾を売ったりしないと思うんだ。よろず屋っていうと思うんだ」

「武器屋だぜ?」

「……武器屋」

「そう、武器屋」

「このカウンター横の魔剤って」

「ポーションだぜ」

「よろず屋だよね?」

「武器屋だぜ?」

「武器以外売ってるじゃん。盾はともかく武器以外のもの売ったらよろず屋じゃん」

「魔剤も売ってる、武器屋だぜ」

「武器屋じゃないんだわ。魔剤って言っちゃってるんだわ。ここ異世界違うんだわ日本なんだわ。監視カメラ設置されてるんだわ」

「お前、何言ってるんだい? ここは武器屋だぜ?」

「最近のRPGのNPCでももう少し語彙力豊富だよ?」

「お前、何言ってるんだい? ここは武器屋だぜ?」

「かぶせてこなくていいから。表の看板変えようよ。コンビニって書いてあるよ?」

「お前、何言ってるんだい? ここは武器屋だぜ?」

「しつこい。何、セリフバグってんの?」

「お前、お前、おおおお前、何言ってるんだいぃぃぃぃ。ここ、ここはここは、ここは武器武器武器武器、武器屋だZE!」

「なんで急にラップみたいになってんの。バグ利用して器用なことやるんじゃないよ」

「何を買っていくかい? 魔剤かい?」

「せめて武器を勧めろよ」

「おすすめの武器がこちらになります。少々お待ちください」

「店に出しておけ。おすすめの武器じゃねえのか」

「三陸産のおいしいホ↑タテになります」

「コンビニか。お前、なんでホタテなんだよ。しかもアクセントおかしいじゃねえか。一文に情報量多すぎなんだよ」

「ホ↓タテ?」

「そここだわんなくていいよ。武器にこだわれよ」

「これは武器ですよ?」

「食べものじゃねえか。おいしい奴じゃねえか」

「相手に食べさせると、確率で食あたりを起こします」

「おぉ、武器だった」

「ただし、新鮮なうえ、キレイな海で育ったので、ほぼ食あたりを起こしませんが」

「ただのウマイ奴じゃねえか。使えないんだよ」

「こちら、今ですとぉー。一つ200ドルになります」

「高いわ。びっくりするわ。三陸産の最高級品さすがだわ」

「セットにポテトもいかがですか?」

「もう武器屋じゃねえんだわ。マックなんだわ」

「お前、何言ってるんだい? ここは武器屋だぜ?」

「またバグってんのか。いい加減にしろ」

「「どうもありがとうございましたー」」


「これで、コンテスト取れるな!」

「とれねえよ。もう少しわかりやすいネタにしろよ」

「じゃあ、考えてください!」

「いつも考えてるの俺なんだわ。それで三回戦に出れたんだわ。次準決だよ。今までやってきたネタでいいじゃん」

「俺たちも、進歩しないといけないって思うんだ」

「わかるけどそれは今じゃねえ」

「進歩を、止めるっていうのか!?」

「違う。ネタ。新ネタ。今やることじゃない。ウケるネタを改良していくのが、今のやることだな」

「はは、ウケる」

「そういうボケはネタでやってくれ。今やられるとイラっとするから」

「じゃあ、ネタに入れようか。サビは抜いておく?」

「寿司じゃねえんだよ。だからそういうのはネタでやれっつってんの」

「はっはっは。ネタは鮮度が命だよ?」

「だからもう……ほんとイラっとするなぁ」

「でも、好きなんでしょ?」

「今は嫌いだよ!」

「じゃあ、明日好きになって、くれるかな?」

「いいともーじゃねえんだわ。古いんだわ。今はそんなに伝わらないから、そのボケ。絶対舞台でやるなよ?」

「それはフリですか?」

「フリじゃねえよ、ガチだよ」

「ガッチガチですか」

「そうだな。ガッチガチだな」

「……突っ込みをあきらめないでください」

「どうしてお前が不満げなんだよ。いいから考えてくれよ。準決落ちるぞ!」

「落ちるっていう奴が落ちるんですー」

「……しばくぞ?」

「ハイ、すんません」

 この後、決勝行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

漫才師 弱腰ペンギン @kuwentorow

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る