偶像と毎日

花宮優

1月20日 特別



「人と出会うということは実はすごいことだ、

その人の過去と未来が同時にやってくるということだから。

壊れやすく、

また壊れてしまったことがあるその人の心が

自分にやってくるということだからだ」


とある詩集にこんな言葉がある。


私は自分が何か特別じゃないといけないと思っていた。そのために努力をしてきたと思っていた。世界で唯一の存在であるために、誰かが代わりのきかない「私」を必要としてくれるために。

でも私はすでに特別だった。私と同じ時間を生きてきた人はいないし、これから私が歩む人生も決して誰かと同じものではないのだから。私が受けた傷も、私が胸に秘める思いも、感情も、そしてちょっと嫌いな自分の一面でさえもすでに特別なのだ。


今の社会では私たちは誰かを蹴落とさないと生きていけない。テスト、模試、受験、あらゆるものが成績で決められ、それが自分の値札になる。

ようやく学校という枠から解き放たれると思ったら、就活、昇進、思いつくだけでもこんなにも誰かと争わないといけない場面がある。


私が特別であるように、私が競わないといけない誰かも特別なのだ。

企業や大学、教授や上司、彼らは私たちの特別さに気づいてくれるのだろうか、そして彼ら自身も特別だということを知っているのだろうか。


特別な私を、特別な彼らを、受験者でもなく就活生でもなく、ただ一人の人間として見てくれる、そんな環境にいたい。

それができなければ高い偏差値も、大きな企業も、その可能性も意味がないのではないのだろうか。

自分が特別だということを、代わりがいない存在だということを忘れずに生きていける、そんな環境で私が、あなたがずっと生きていけますように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る