どうも勇者です。魔王と一緒に戦争から逃げて新しい人生を謳歌する事になりました

洞爺湖

第1話 とある革命家の演説

皆さんもご存知だろう。此度の戦争を。あの忌々しい戦争を。


戦争が起きてしまった理由は至って単純だった。勇者と魔王の存在だ。彼らは強過ぎたのだ。他の追随を許さぬほどに。一国の大軍と張り合うほどに。


勇者と魔王はある日突然現れた。誰が造ったのかも分からない。何の為に造られたのかも分からない。


天から湧いた勇者という強大な戦力を有したパレス王国は他国への侵略を開始した。


魔王を有するオリアガル皇国も当然同じ様な事をした。


そして二つの国はぶつかり合う。


初代勇者と初代魔王の争いは勇者側の敗北で終わった。


そこからは誰もオリアガル皇国を止められなかった。勇者と魔王が居るからこそ戦争になっていたのだ。勇者が消えたのなら、それはもう争いでは無く只の虐殺だ。


このままでは負けると判断したパレス王国は皇国の脅威を感じる周辺の国を巻き込んで南方連合を設立した。


時間稼ぎにはなった。が、戦況は以前として劣勢であった。


そこに南方連合に新しい勇者が誕生したとの報が入る。


戦況は翻った。


新しい勇者に複数の国、さすがに魔王を有する皇国も対処ができなかった。


だから同じ様に北方連盟を作った。


大国同士の争いは世界に波及していった。


勇者と魔王、そのどちらかが失われても戦争が続行するという前例が出来てしまった。


不思議と南に魔王が、北に勇者が現れる事は無かったが、時を経るにつれて勇者と魔王が現れる間隔は短くなっていった。


地獄だった。


一月前に勇者が魔王を倒したと思ったら一月後には魔王に倒されている。


怨嗟が怨嗟を呼んだ。戦争を続ける理由が他国への侵略ではなく、他国への復讐になっていった。


そんな地獄を終わらせたのは、この地獄のきっかけであった勇者と魔王だった。


彼と彼女は逃げた。


戦争から逃げた。


そして同時に最高戦力を失い、力が均衡した両陣営は気付いた。


戦争の意義を。


戦争の意味を。


戦争としての象徴を失った民衆達は気が付いた。


戦争の意義を。


戦争の意味を。


意義なんて無い。意味なんて無い。もはや何が発端で始まったのかも分からない。勝ってどうしたかったのかも分からない。


かくして戦争は終わった。そう、戦争は終わってしまった。


どちらの勝利でもなく、どちらの敗北でもない。何も得ることはなく、只々失うだけだった。


そこに意味が無いなら、そこに意義がないなら、我々は何の為に今まで失ってきたのだろうか。


愛する人を。家族を。友達を。人生を。


だから我々は無意味な戦争を起こした者達に革命を起こす。


これは復讐では無い。


未来を生きる者達が二度とこんな理不尽に合わないように。二度と無意味に大切なものを失わないように。そうしなければならない。


この最悪のバトンを次の世代に渡してはならない。


繰り返すがこれは復讐では無い。これは自由と平和への革命だ。


私は宣言する。


パレス王国にもオリアガル皇国にも属さない。


南方連合にも北方連盟にも属さない。


何者にも縛られず何者にも属さない。


そんな独立国家の樹立を目指した誇り高き革命を、今、この場で、宣言する。

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