第19話 贈り物は存在証明?

 騒がしい夜が明け、日曜日になった。


「彩月ちゃん、お外行きたい」

「どこに行きたいの?」

「お買い物ー」



 あゆむちゃんが何を欲しいのっかハッキリしないので色んなお店が入っているジオンモールに行く事にした。


「彩月ちゃん、こっち、こっちー」

「走っちゃあぶないよー」


 なんだか、私ってだんだん母親みたいになってきている。まだ未婚なのにぃ。


 そうしてたどり着いたお店、ではなくATM。

 お金を引き出したいらしい。


「いくら引き出すの?お金なら私が…」

「私の口座から出すの。今すぐ欲しい物があるからー」


 パソコンでも買うつもりなのかしら。

 カードで買えばいいのに、って店頭で買う場合、見た目から怪しまれるからカードが使えないのかな。

 成程、そういう事ね?でも、パソコンなら通販で買った方が安そうだけど…。


 結局50万引き出した。

 今のATMでは一日に引き出せる限度額。


「それでどこに行きたいの?」

「ないしょっ」


 そうして連れられてたどり着いたのはジュエリーショップ。


「かわいい~、お嬢ちゃん、何が欲しいの~?」

「指輪がほしいのっ、ん-と、えーと、コレっ、コレを二個ください」

「内側に宝石が嵌まったタイプね、お嬢ちゃんと彼氏の分かな?でもこれちょっとお高いよ?」

「大丈夫」

「じゃあ指のサイズを測ろっか?」

「うん、一つは彩月ちゃんの薬指のサイズで、もう一つのサイズは─」




「で、では、ネックレスはサービスにするとして、お値段は43万円になります」

「はい、これ」

「ぴ、ぴったりですね」


 ここまできて、店員がようやく私に確認を求めた。


「(本当にいいんですか?)」

「(え、ええ、言う通りにしてください)」


「では、小さい方は在庫がありますので今お渡ししますね、大きい方のお渡しは三日後、水曜の13時以降になります」


 店の中で私は完全に固まっていた。

 このプレゼントを考えたのは歩さん?それともあゆむちゃん?

 飾り付けから考えるとこれは結婚指輪にあたる。

 初めてプレゼントされた指輪が幼女からというのは少し変な感じがする。


「おてて出して」


 あゆむちゃんによって左手の小指に付けられた指輪。


「ありがと…」

「これ、ずっと買わなきゃって思ってたの。でも、どうしてかな?わかんない」

「お、大きい方の指輪ってどうするの?」

「ネックレスに通して、私がつけるの。あと、大きくなったら指につけるの」


 大きくなったらってアレ、男物のサイズよ…。


「あれ、彩月ちゃんだいじょうぶ?」

「ううん、嬉しくて涙がでちゃった。ありがとうね、あゆむちゃん」


 嬉しさのあまり涙がこぼれる。

 間違いない、これは歩さんからの贈り物。

 初めてのプレゼント、指輪、それ以上に歩さんが戻って来る可能性を感じる。

 私はその事が…、その事だけで十分嬉しかった。


 歩さん、ありがとう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る