夜水 凪(なぎさ)

sturdy cage

ふと、深夜に家を飛び出したくなった。

お日様に見られることのないこの時間に。

お月様はきっと何を見ても黙っていてくれる。

玄関からじゃなくて、窓からがいい。

誰に見られるわけでもないけれど。


こんな風に思うのは何回目だろう。こんな風に結局諦めて部屋に留まるのは何回目だろう。

咎める人はもういないのに、どうしても躊躇ってしまう。


夜になると外には、ばけものがいると聞かされて育った。

「夜は怖いのよ。」

それが母の口癖だった。

そんなものはいないって、もうわかっているけど、私の世界はそういうもので、これから先も変わらない。

母は私の神様。世界の創造主。

もう神様は私の側にいないけど、心の中にずっといる。


だから家を飛び出したいのに、わたしは結局こうして部屋の小さな窓から電気の付いていない遠くのビルを眺めることしかできない。

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