【夜中に1人でも読める】本当にあった怖い話【1話完結ショート集】

天色亭

不思議な話(ショート)

「おじいさん遊びましょ」

中1のときの話です。


当時バスケ部だった私は

部活を終えたあとの夕方、

クラスメートの貝谷さんと二人だけで

自分たちの教室に戻り、

バスケ部の練習着から制服に着替えておりました。


バスケ部の更衣室もあるにはあったのですが、

狭い狭い更衣室は先輩たちだけのものでして。

1年生の私達は、自分たちの教室で着替えをするのが当たり前の事でした。


部には他にも一年生がいましたが、

それぞれが自分たちの教室で着替えるため、

私はクラスメートの貝谷さんと二人だけで

その日も夕方の薄暗い教室で着替えをしておりました。


うちの学校の作りは

一階に昇降口、一年一組、一年二組、一年三組の並びで教室があり、一年四組以降は二階に教室がありました。

二年生、三年生は更にその上の階に教室があります。


私と貝谷さんは一年二組だったため

一階の教室でしたが

他のバスケ部の一年生は皆、四組から先のクラス分けだったので

その日も私達以外は皆、2階の教室におりました。


それぞれの着替えが終わったら1階の昇降口で待ち合わせをして

皆で一緒に帰るのが、私達のいつものお約束です。


ーーーーーーーーー


その頃の私達の学校では

ちょっとだけ怖い遊びが

ひとつ、

流行っておりました。


“おじいさん遊びましょ”

という遊びです。


そこらへんの壁をトントンとノックしてから


「おじいさん、遊びましょ」


と、壁に向かい声をかけるのです。


そうしてから壁に耳をあて、澄ませると


トントン… 


と、返事が返ってくる、そういう遊びです。


とても不思議なことなのですが

トントンと、ノックをして壁に声をかけると

必ず100%の確率で

同じ回数だけ “返事” が返ってくる…。


今考えてもとても不思議な遊びですが

当時の私達にも理解不能で…。

本当に不思議だよね!とのことで

だからこそ面白く、

学校中で流行ってしまっていたのかしれません。


ーーーーーーーーー


キツイ部活が終わり、制服に着替え終わったハイテンションの私達2人は

教室から出る途中


「あれやろ!あれ!おじーさん!!」

「だね!!やろやろ!!」


と、ほんの軽いノリで壁に向かい

声をかけました。


教室の出入り口の扉と

黒板との間にある壁。


コンクリートの壁ですが

全面がコンクリート剥き出しではなく、

一部分、ベニヤ板にザラッとした壁紙が貼り付けてあり、そこには学校行事などのお知らせが画鋲で貼り付けてあります、よくある

教室の前方向のコンクリート壁です。


やる前から大笑いをしている私達は

そのままのテンションでその壁に2回、

ノックをしてから


『おじーさん遊びましょ!!!』


と、大声で話しかけました。


すかさず壁に耳をあてようとする私達に


壁は 波を打って


【 ドォォン!ドォォン! 】


と返事をしました。


それは、拳の形がハッキリと見えるほどの

大きな返しで、

それを見た私達は


「おおおおおおお~~!!!!!!」

「おおおおおおおおお~~!!!!」


と、その拳の形に盛り上がる壁を見ながら

爆笑して喜んでいました。


私達の顔と、壁との距離は

二の腕ほどぶんしか離れていないため

壁が拳の形で盛り上がるたびに

「おおおお!おおおおおお!!!」

と、上半身を反らせて大笑いをしました。


その後すぐ、笑いながら

反対面の一年一組の壁を見に行きましたが

何も変わりなく、誰もいない暗い教室で。


冷たくて分厚いコンクリート壁が

薄暗い

一組と二組の間にあるだけでした。


その事実も面白く、私達はまた大笑いしながら「凄い!凄い!」と言って

何もなかったように昇降口へ向かい

皆と一緒に帰りました。


中学を卒業したあとも

たまにこの日のことを思い出しては、1人

ふふふと笑っていたのですが、

最近やっとその不思議に気がついたのです。


“なんで壁が、波打つんだ?”

“なんで壁が、拳の形に盛り上がったんだ?”


本当に不思議な話なのですが

私は

最近そのオカシナ自体に

気がついたというか。


それまでは何度思いだしても

ただの面白い思い出なだけで、

人にわざわざ話すことでも無く

それだけの小さな話…

という認識だったために、

なんの違和感も

感じもしませんでした。


オカシナ体験と気がついてからは

あれは勘違いだったのか?とか

本当に現実にあったのかすら疑問に思うようになってしまいましたが

それに気がつくまでは

疑問のなにも

実際のただの『思い出』なので

不思議も何も、なかったのです。


いま思うことは

貝谷さんは

あの日のことを 覚えているのか?

ということ。


あの日のことを、聞いてみたいです。

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