第二十八話 竜人族の長の家
クリシュとの試合に勝利した俺の元へ竜人族の長がやってきた。
「おまえは何者だ!」
俺にそう言ってくる。何者かと聞かれても困るが、
「人間ですが」
「いや違う、そう言うことじゃない。おまえは持っているのか?」
持っているとは何をだ? 少し疑問に思う。
「何を言っているんですか?」
「そこまで言わないと分からないのか!
俺とウンディーネが会話をしているときに竜人族の長は俺たちの方を見ていた。そして目の色を一瞬変えた。その謎の答えがこれだ。この人は精霊王の
「なんでそのことを知っているんですか!?」
「俺は昔精霊王の
俺と同じ
俺は、その者に興味があった。だが今はそんなことよりも、
「サーシャの話を聞いてもらえませんか」
「分かった。三人ともついてこい」
俺とヒストリア、それにサーシャは竜人族の長の後に続き、場所を移動した。
そしてやってきたのは長とサーシャの家であった。大広間、そこで向かい合って座る俺たち三人と長。なぜサーシャは俺らの側に座っている。
「サーシャ、俺に話があるのか!?」
「はい」
サーシャの顔つきが変わった。とても真剣な顔。
「私は人間の男たちの集団に友達二人と一緒に捕まりました。その時、友達の一人がこの里の場所をしゃべりました」
「その程度のことか、それなら問題ないだろう。この里の周囲には
「私もそう思っていました。ですが、彼らは私たちの里の近くに
「そんなことか、問題ない。我々が人間に捕まることなどない。つまりそんな手錠をかけられることもない」
その自信はどこから湧いてくるのだろうか?
「そ、そうですね。ですが、彼らは何をしてくるかわかりません。じゃないとあの二人が殺されたことに理由がつけられません」
「おまえの失態だろう! 俺はずっと言い聞かせてきたはずだ、里の結界の外に決して出るなとな。だがサーシャおまえはその言いつけを守らず友達を二人を巻き込んだ。そして結果として二人を失ったのだ」
「そ、それは・・・・・・」
俯いて何も答えられないサーシャ。
「何か間違ったことを言っているか!」
「い、いいえ。お父様に間違いはありません。今回のことは私の軽率な行動が招いた結果です」
「反省してなさい」
最後の長の言葉に対して何も言わずに無言で頷くだけのサーシャ。
そして、先ほどまでサーシャの方へと向いていた視線が俺へと向く。
「里の入り口での話は聞いていた。我が娘を救ってくれたことは礼を言う。それと、精霊王の
俺に対して頭を下げてくる。広場での態度とは大違いだ。
「そんなことよりも俺の話を聞いてもらってもいいだろうか」
「なんだ」
「先ほどのサーシャの話だが、俺は今回のことに人間以外の何者かがかかわっている可能性を考えている」
「面白いことを言う。人間以外の何がかかわっていると言うんだ」
俺は竜人族の長に王都であったことをすべて話した。その話を聞いた竜人族の長の表情がかなり険しい物となった。
「その話マジなのか」
「はい! 俺は、そのことを踏まえて今回のこの里を狙う男たちの計画には魔族が関わっているのではないかと考えています」
「そうか、分かった。俺たちでもある程度は準備が必要になってくる」
「俺たちもこの里を守る戦いに参加させてもらえないでしょか」
「よいのか!? 俺たちが君たちに対して先ほど取った言動は決して許される物ではない。それでもいいのか?」
「はい! もともとこの里を救いたいと言うサーシャの願いを聞いて俺たちもここまで来たのですから」
「わかった。よろしく頼む」
俺と竜人族の長は握手を交わした。
それから、日も暮れていき里での夕食を済ました俺たちは長の家の一室を借りられることになったのだ。
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