第二十七話 アルクVS竜人族最強の男
里人たちの後ろより俺たちの元へとやってきた男。
「クリシュがやるのか」
「ああ、本当にこいつが俺たち竜人族よりも強いなら俺に勝てなきゃな」
「いいだろう、この里最強に勝てなきゃ竜人族よりも強いとは言えないからな」
「分かりました」
「なら移動しようか」
竜人族の長の言葉で俺たちは里の広場へと移動してきた。
広場の中央で向き合いながら立つ俺とクリシュ。そんな俺たちを囲むように座っている里人たち。俺を逃がさないようにとでも考えているのだろう。
そして、俺とクリシュの間に立つ竜人族の長。
「お兄ちゃん頑張ってー!」
「アルク様、頑張ってください」
里人たちの中から聞こえる声援。
そんな中、
「アルク様、どうされますか?」
ウンディーネが話しかけてくる。
「最初は剣だけでやってみる、竜人族の力を見たいしな」
「分かりました。ですがもしもの時は私たちをお呼びください。私たちはアルク様の力の一部なのですから」
「ああ分かった」
また、別空間へと戻るウンディーネ。そんな俺とウンディーネが会話している姿を見ていたのか竜人族の長の目の色が変わったように感じた。
そして、
「ただいまより、人間アルクと竜人族の戦士クリシュとの一対一の試合を開始する。決着は降参するか、どちらかが戦闘不能になったらとする。ただし相手を殺すのなし。もし殺してしまったら負けとする。戦い方は自由、それでははじめーーー!」
竜人族の長の合図で試合が開始された。
クリシュは自分の身長と同じ位の長さの槍を持っている。
どのように攻めてくるのかとお互いに目での牽制をしつつじりじりとお互いの間合いを詰めていく。いつ仕掛けるのかと里人たちに緊張がはしる。
槍を構えるクリシュと剣を構えている俺。リーチの差は二倍近くになる。つまり攻めるとしたらクリシュの方が先に来るだろうと考えている。
そして、クリシュの間合いに入った瞬間、物凄い速さで槍で突き攻撃を仕掛けてくる。
俺は、その攻撃に入る瞬間に動き出してクリシュの間合いに入る。一瞬俺から視線を外したクリシュは俺を見失う。
それに、槍はリーチは長いが、間合いに入られるとどうしようもなくなる。俺は、定石通りに攻める。
間合いに入った勢いのままに剣で突っ込む俺。だが、とっさに槍を戻したクリシュは俺の剣での突きを槍の持ちて部分で防ぐ。
そこで、お互いに一瞬動きを止めるも一度距離を取るために背後へと離れようとする俺に対して、逃がさないとばかりに追撃を仕掛けてくるクリシュ。連続のでの突き攻撃を俺は剣でしのぎつつ下がる。
だが、クリシュは俺との距離を放さずに、迫ってくる。
「様子見はこんな物か」
俺は、剣に魔力を流して防御の瞬間にクリシュの持つ槍に直接魔力を流す。それにより、一瞬動きを止めるクリシュ。その隙を見逃さずに俺は追撃を掛ける。魔力を乗せた斬撃に防戦一方となるクリシュ。形勢が逆転。
「クリシュ、そんな人間に負けるな!」
「早く倒しちまえ!」
などと周りの里人から声が飛ぶ。
だが、そう簡単な話でもない。魔力を乗せた攻撃を防ぐには魔力を使って防ぐしかない。だがクリシュは現状それをやっていない。もし出来ないのだとしたらこのまま俺の勝ちで終わるだろう。だが、竜人族の最強のクリシュが魔力を扱えないわけがない。だとすると何かを狙っているうと考えるのが妥当。
俺が、そんなことを考えていた矢先、
「フレイム」
クリシュからの魔法が放たれた。火の魔法フレイムは前方に炎を飛ばす魔法。よく防御や接近している相手に使ったりする。
炎から一度距離を取る俺。そのたった一秒と言う一瞬の時間でクリシュはやり全体に魔力を通しそこへ属性をつけてきた。
槍の刃先に纏われる炎、それに体全体にも魔力を纏って基礎能力を向上させている。
「やっと本気を見せてくれた。俺もやっと少し本気を出せる」
始めの内は様子見、それから少しだけ力を見せる事で相手より少し優位に立つ。そこで実力を見せてくればよし、もしもそこで何もしてこないならそのまま押し切るろうかと考えていた。
クリシュは俺の先ほどまでの力を見て本気でやっていると思ったのだろう、魔力を使った戦闘になってから、物凄い勢いで攻撃を仕掛けてくるクリシュ。今自分が優位に立っていると考えているのだと思う。
俺は、自身の体に魔力を纏いクリシュと同じことをする。ただし剣に纏わせるのは水属性。相手の弱点を突くのは戦闘で常識。
火と水なら水有利となる。そのために俺がじりじりとクリシュを押していく。
次第に手数が減っていき、防戦一方となるクリシュ。その時、物凄い魔力が一点に集まっていくのに気づいた。
何かを企んでいるが何をしてこようとしているかは分からない。
そのために俺は体と剣に纏わせる魔力を最大限まで引き上げる。
「ファイアーブレス」
クリシュの口からものすごい熱量の炎が放出される。俺はそれを体に纏う魔力で防ぐも、ファイアーブレスの威力が俺の纏う魔力を防御力を上回ろうとした。
「すごいな」
これは俺の正直な感想だ。人の体でブレスを放つのにも驚いたが、この威力は竜の放つ物と遜色ないと思った。まあ戦ったことはないがな。
だがそんな悠長なことを言ってもられない。
「ウォーターシールド」
「そんな初級の水の防御魔法で防げるわけないだろう」
「それはどうかな」
俺の前方に展開したウォーターシールドはクリシュの放つファイアーブレスを完全に防いでいる。
「!!」
それに驚き少し取り乱すクリシュ。
「そろそろ終わらそうか」
俺はファイアーブレスをウォーターシールドで防ぎつつ、複数の魔法展開する。
「ライトニングランス、ファイアーボール、ウォーターボール、ウィンドカッター」
四属性の魔法を展開、それにより周りを囲んでいた里人たちも驚く。
そして、竜人族の長の口から、
「やはりか」
一言がもらした。
何がやはりなのかわからないが試合開始前の俺と精霊との会話を見ていた。それを見て目の色を変えたのは見間違えではなかった。
俺は、展開した複数の魔法を一斉にクリシュに向かって放つ。これはもう数の暴力であろう。
何とか回避しようブレスを解き回避しようとするクリシュだったが、数の多さから全てを躱し切れず魔法を受ける。そして決着がついたのだった。
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