第十九話 初依頼

 ギルドに入ってすぐにあった冒険者のいざこざも収まり俺たちは掲示板の前に来ていた。さすがに王都のような大きな街にギルドに比べるとどうしても依頼の数と質は落ちる。


 そんな依頼の中に今回の目的にちょうどいい依頼が一つ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 常設依頼


  森に発生中のトレントの討伐


  討伐数五体につき報酬発生(五体ごとに三十リア銅貨)


  Dランク冒険者、冒険者パーティーより受注可能


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ここに書いている一リア銀貨とは俺たちは生活しているフォートレス王国の共通通貨。一番下が一リア銅貨で、これが百枚で一リア銀貨、さらに百枚で一リア金貨、さらにその上があり一リア金貨百枚で一リア白金貨となる。一リア白金貨を持つのは大金持ちの貴族くらいで俺みたいな冒険者には一生目にする事はないだろう。


 今はそんなことよりも、この依頼はヒストリアの実力を見るに適している。


 討伐対象のトレントはそれほど攻撃力も高くなく、移動速度もかなり遅い。Dランクのモンスターの中では比較的に倒しやすい部類に入る。


 俺は、その依頼書を取りヒストリアと受付へと持っていく。


「ようこそ、キリス冒険者ギルドへ」


 いつもの一言。どこのギルドに行こうと最初の言われるのはこの言葉であった。


「お兄さん凄いですね」


「何がですか」


「さっきのグルドとのやり取りですよ。私見てて少しひやひやしました」


 さっきの男グルドっていうのか。


「そんなに強いんですか?」


「ええ、本人の言う通りこの村一の実力を持っているでしょ、それに村長の息子でもあり誰も逆らうことが出来ないのです」


 (ああ、だから周りの冒険者は俺たちの方を何とも言えない目で見ていたのか)


 でもあの程度の実力でこの村一だと他の冒険者の実力もしれている。


「それに、こんな小さな村の冒険者ギルドにはそれほど実力のある人が来ることがありませんので彼に対して何かを言える者などいなかったのです。ですが、お兄さんが先ほどグルドに一泡吹かせてくれたことで他の冒険者の方もスッキリとしていると思いますよ」


「そうだったんですね」


 俺は軽く回りを見てみると数人の冒険者がお姉さんの言葉に対して頷いていた。


 そこまでたいしたことをした覚えはない。あの程度の男を倒してもな。


 そんなことよりも、


「この依頼を受けたいのですが」


 俺は本来の目的へと戻る。右手に持っていた依頼書を受付へ提出。


「はい、常設依頼トレントの討伐にございますね。冒険者カードのご提示をお願いいたします」


 俺とヒストリアは冒険者カードを提示。


「お二人はパーティーでよろしいですか?」


「はい」


「かしこまりました。これで手続きは完了にございます」


 俺たちは依頼の手続きを終え、お姉さんより依頼についての説明を受ける。


「現在、このキリス村ではトレントの目撃情報が多数寄せられております。それにより山へと仕事に行く木こりの方たちが山に入れない状態となっています。そのために至急全てのトレントの討伐がしないといけないと言う結論になり常設依頼となっております」


 トレントはそれほど倒すのに苦労しないモンスター。ただし見つけるの一苦労するために積極的に討伐依頼を受ける者が少ないのだ。


 だからこそ、俺たちのようにトレントの討伐依頼を積極的に受ける冒険者はギルドにとってかなり貴重な存在と言える。


 それにこの依頼の報酬もかなり良かったのも俺がこの依頼を選んだ理由の一つであった。トレント討伐依頼だと一匹につき二リア銅貨が相場、そのために五体討伐で三十リア銅貨かなり高報酬。だからこそ緊急性を感じる。


「分かりました」


 俺たちは、冒険者ギルドを出てトレントが生息している森へと向かう。


 その道中で俺は、


「ヒストリアはトレントについて何か知っていることはあるか?」


「木のモンスターかな」


「そうだ。トレントは体その物が木でできていて、他の木と同化して近くを通りかかる人間を襲うんだ。だから発見がとても苦難でかつ討伐報酬が安いこともあって人気がないんだよ。それにこのトレントは厄介な特性を持っているんだ」


「厄介な特性ですか?」


「そうだ、トレントには人の生命力を吸い取る特性を持っている。だから基本的にトレントと戦う時は接近戦ではなく後方からの魔法攻撃が有効な攻撃手段とされているというわけだ」


「さすがお兄ちゃんです」


 これくらい普通の知識じゃないか? などと考えていた。


 そこで一つ気になることが、


「どういえば、ヒストリアはかなりの魔導の神から授かりし技術ギフトを持っているけどどんな魔法が使えるんだ?」


「どうやって確認したらいいんですか?」


「そうだな~、まずは目をつぶって心の中で魔導って言ってみろ」


「はいです!」


 その場で目をつぶるヒストリア。


「凄いですお兄ちゃん! たくさんの魔法の名前が見えるです」


「どんな魔法がある」


「エクスプロージョンとか、雷帝とかあるです」


 今ヒストリアがいった魔法は二つともが上位魔法に分るされる物で最初から使える物ではないのだが、これもエルフの特徴かもしくは特別な才能を持っていると考えるしかない。


 本来魔導の神から授かりし技術ギフトを持っている者は大体誰かの下について数年間修行をするのがごく一般的とされれており、その中で中位から上位の魔法を得ることが出来るのである。ただし、俺みたいな例外的な存在もあるのだが、今回のヒストリアもその例外に入るのだと考えられる。


 だが、これはかなりの才能、この子はこの世界で最強の魔導使いになれるかもしれないと俺は考えた。だからこそ今回の依頼でしっかりと魔法の使い方を教えないといけないんだと改めて肝に銘じたのだ。


 そんなことを考えていると、この森に入った時より使っていた探知の魔法に反応があった。


 ここから北東に六十メートルの所に一体とそこより二十メートル先にもう一体いる。


「ヒストリア、トレントを見つけたぞ!」


 俺は、ヒストリアに発見したことを使えるのだった。

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