第109話
エラの呪いを解くのは、はっきり言ってかなりしんどかった。それはエラが悪いとか、そう言う意味ではないのだけれどとにかくきつかった。
私には、無かったのだ。呪いを優しく受け入れてやれる心が。私のやり方が正しければ、呪いは聖女の優しさから生まれる何かによって浄化される。それが優しさそのものなのか、魔力なのかは、私にもわからない。
そう、わからないのだ。原理も、呪いが浄化されていった理由さえも、何も。
私は聖女のはずなのに、何もわからない。その現実は、いつも私を苦しめる。多くの人々を救えるだけの力があるはずなのに、何もできない。
相棒の、契約している精霊がいないせいだ。だって、だって、そうでしょう。歴代の聖女達は精霊とともに生き、世界を救ったのだから。私だって、契約した精霊さえいればっ……。
「雪菜、大丈夫よ」
冬菜は私の方を見て、優しく笑う。まるで子供をあやすようなその目は、密かに私を癒している。
ふとした時に私を助けてくれるのは、いつも冬菜だった。それは前世から変わらない話で、いつだって冬菜は私を守ってくれた。私が追い詰められそうになった時は、いつも冬菜がそばに居てくれた。
悔しいって地面を叩けば、一緒に地面を蹴ってくれた。苦しいって喚けば、苦しくなくなるように介抱してくれた。しんどいって泣けば、私が休めるようにベッドメイキングをしてくれて。実際にそうしてくれたわけではなく、ただの比喩に過ぎないのだが、そのくらい、私は冬菜に助けられてきた。
いつもこの声を聞くと、安心する。落ち着ける。冬菜は大人になりきれない私をあやすように笑い、そして机越しに手を握ってくれた。
「そう、ね。ありがとう」
頭の中から暗い何かが消えていくような気分だった。結局私は弱い人間だけれど、そこを補い合っていくのが仲間というものではないのだろうか。
ゼラ達の方を見ると、3人は少し心配そうに私を見ていた。その視線は寄り添うように、温かい。
個々の考えのある生き物だもの。時には仲違いをすることもあるだろうけれど、こうやって助け助けられ生きていくのは、私にとって心地がいい。
温かさに満たされていく。大丈夫、やれる。フレンのためにも、この国に住む人のためにも、できることをやらなくちゃ。
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