第80話

 前世の冬菜の、後輩に対する態度を思い出す。あの頃も似たようなことを言っていたなと懐かしさを感じながら、私は2人を見ていた。

 フゥもほんわかした笑顔で2人を見守っている。けれど、エラは1人だけ真剣な顔をして木の精霊さんを見ている。何か考え込んでいるらしく、その視線に温かみは感じられない。

「あの、木の精霊さんが切られるまでどのくらい時間があるんですか」

 エラは単刀直入に話しかけた。しっかりしたその目に、迷いはない。ゼラ達は驚いたような顔でエラを見ていたが、私は気にせずに誰かが発するであろう返事を待った。

 私達は、彼女に残されている時間がわからない。少ないのか、多いのか。別に面白がって聞いているわけでも、場の雰囲気を悪くするためでもなく、助けるために必要な情報だ。切られてしまうかもしれない日がわかれば、ある程度は対策を考える参考にすることができる。

 私達の真剣さを察したのか、戸惑っていた木の精霊さんも冷静さを取り戻し、重い表情をしている。

「それが、よくわからないのです」

 木の精霊さんは暗い表情をして俯いてしまった。よくわからないとはどういうことなのか。まだ正式に切られる時期まで決まったわけではない、ということだろうか。

「そもそも、切られることすらもまだ決定している段階にないのです。それなのにご迷惑をおかけして、なんとお詫び申し上げればいいのか……」

 何を言っているのかがよくわからず、私達は顔を見合わせて首をかしげる。切られることすら決定していない。けれど、私達は切られてしまうからと、焦っていたのではないのだろうか。それとも、切られる可能性があるから、今からその可能性を潰しておく……ということなのか。

 フゥの方を見ると、キョトンとした目をして笑い返してきた。いやいや、そういうことではなくてですね。

「ええっと、ね。切られてしまうのは、ほぼ間違いがない状況なんだ」

 木の精霊さんの前でする話でもないのだろうが、私達はさらに混乱してそんなことを考えることもできなくなっていた。切られることは決定していないけれど、切られることは確実で……って、ええと、どういうこと。

「この国の王様は、私達が開発に邪魔だから切ってしまえと命令しているのですが、近隣の皆さんがそれを止めてくださっている状態で……」

 木と自分は一心同体だという決意が、私達という言葉から伝わってくる。

「ですがそれも、もう長くは持たないかと……」

 精一杯の顔で、彼女は寂しそうに笑っていた。

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