第46話
人間国はいろんな見た目をした人間の集まり、と言っても、外国から来ている人を除けば、ツノが生えたり、尻尾が生えていたり、なんてことはない。けれど、他の国は国の中でも、見た目もかなり違う。
魔国は魔族などの人間の形をしたものだけでなく、獣の魔物も含まれる。獣人国は四足歩行の哺乳類から爬虫類、鳥類となんなりといるし、人魚国は、前世の世界でお伽話に出てきたような、下半身が魚のものから、上半身が魚のものも国民として数えられているのだ。
エラは目をキラキラと輝かせて、冬菜を見ている。世の中のことを知るのが楽しいのだろう。何か新しいことを学ぶ。世界の狭かったエラにとっては珍しかった経験だ。これからはたくさんいろんなことを知って、楽しんでいくことができればいいのだが。
今のところ、世界で戦争は起きていない。ある程度平和になったこの世界。治安が悪い場所もあるだろうが、いろんなところを見てみたいな。私達は剣や盾など、体で戦うことはできないが、魔法を使うことはできる。冬菜は五大精霊だし、ある程度の敵は倒せるはずだ。何せ伝説の精霊様なのだから。私だって、学園で学んだくらいは使えるし、自衛くらいならできるだろう。このメンバーなら、多少何かに巻き来れたりしても大丈夫だったりして。
「私、人魚さん達の国に行ってみたい。海の中にあるんでしょ。魔法で入れるんでしょ」
期待した目で、エラは私たちを交互に見る。エラの言う通り、人魚の国に行くには魔法が必要だ。魔法をかけてくれるサービスやツアーもあるが、基本的には、自分で魔法をかけたり、魔法の使えるものに魔法をかけてもらい、海中でも生きていられるようにするのだ。
「人魚の国か……行ったことはないわね」
私もないなと思いながら冬菜を見ると、冬菜は少し気まずそうな顔をしていた。火の精霊としては、水に囲まれた国は少し息苦しいのだろうか。様子を見るに、不可能なのではなさそうだけれど。
「私はあるわ」
フィーが恐る恐る手を挙げる。さすが水の精霊、と言ったところだろうか。
火の精霊の住処には炎が燃えていた。精霊はそれぞれの属性の自然があるところの方が心地いいのかもしれない。
「それなら、転移できるわね」
転移魔法は一度行ったところのあるところにしか飛ぶことができない。誰かがそこに行ったことがあるという過去が必要なのだ。
「そういえば、水の五大精霊様もそちらにいらっしゃるのよ」
ランは何気ないことを話すように、自分の髪を撫でている。
五大精霊は確か、世界に散らばってそれぞれの問題に立ち向かっているのだと言っていたはずだ。水の国、人魚国に何か問題があるのだろうか。
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