第47話
冬菜は驚くことなく頷いている。
「あの子には何度か会ったことがあるわ」
あの子。その水の五大精霊は、冬菜よりも若いのだろうか。それとも、見た目が……。
精霊の見た目は、年齢とともに成長するわけではない。精霊は生まれた時から少年少女や大人の姿をしているし、そこから成長したり、老いることはほとんどないと聞いている。
「あの子、人魚の国にいたのね」
冬菜はどこか楽しそうだ。この世界での冬菜の知り合いに会えるのは、私も嬉しい。冬菜がどんな精霊として生きてきたのかを知りたい。きっとそれはエラも同じだろう。
「できれば、水の五大精霊様にお会いしたいわ。あのお方の抱えていらっしゃる問題に、少しでも協力して差し上げられたらいいのだけれど」
フィーはため息をつきながら俯いてしまった。フィーにとって、自分の属性の五大精霊は、ほかの五大精霊に比べても特に大きな存在なのかもしれない。とても尊敬しているのだろう。
「私ができることは少ないかもしれないけれど……」
エラの声に、一斉にエラに注目が集まる。エラはそれに少し驚きながらも、地面に目線を向けながら続けた。
「誰かを助けられる旅ができたらいいなって、思い、ます」
少し緊張した様子で、肩くらいまである髪を触りながら、エラは小さな声でそう言った。
思わず顔が笑ってしまう。冬菜からすれば涙が出るほど嬉しかったのではないだろうか。自分の娘が、自分のことで精一杯だった娘が、誰かのために何かができればと思って、口に出したのだから。思っただけでも、言ってみただけでも、誰かのことを考えられるのは素晴らしいことだと私は思う。
「いいわね。誰かを助けられる旅をしましょう、エラ」
冬菜が優しく微笑む。こういうとき、やっぱり冬菜はエラの母親なのだなあと思う。
「それじゃあ、人魚国に行って、水の五大精霊様を探すと言うことで」
ゼラがまとめるようにそう言うと、私達は一箇所に固まった。
冬菜が宙に手を掲げると、上からキラキラとしたものが降ってくる。自分の中の何かが変わっていくのが感じられた。おそらく、水中でも生きていくことができるような魔法をかけてくれたのだろう。人魚国に行った人から、適応するためのその魔法は、とても綺麗なものだったと聞いたことがある。
「さあ、いくわよ」
私達は互いにつかまりあうと、そっと目を閉じた。
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