第14話
私が衝撃の事実から浮き出る疑問に悩まされていると、火の精霊が無理矢理作り出されたような顔で笑った。苦しいような、悲しいような。複雑に感情が絡まったような、そんな笑顔で。
「それがね、精霊王様が聖女さんは大丈夫だから、もし来たらそのまま居させてあげなさいっておっしゃってたの」
私は不安と見間違うような衝撃を受けた。精霊王は私がここにくるであろうことを知っていた……。いや、そんなことはありえない。だって、私は。
「それ、いつの話」
私はつい食い入るように3人に問いかけた。3人は驚いたような顔をしつつも、うーんと私のために思い出そうとしてくれているようだ。
「あ、そうだ。今の精霊王様が精霊王様になられたときだから、10年くらい前の話じゃないかしら」
はっと、思いついたように火の精霊が顔を上げた。ぽん、と手を叩いて高い声で答える。
10年前……。思い当たる節が特にない。それに、私がここにこようと思いついたのも、記憶が戻り、婚約破棄をされたあと、つまり最近のことだ。私でさえ知らなかったことを10年も前に……。
「精霊王様は未来のことがわかる魔法使いなのかしら」
ぽそりとつぶやいたその言葉に、精霊達は一斉に光のような笑顔になって羽を羽ばたかせ、飛び上がった。
「精霊王様は素晴らしいお方よ」
「そうよ。精霊は仲間意識が強いけれど、精霊王様はそれ以上だわ」
「力が弱くなられるまで、毎日のように森の中を見回っておられたもの」
3人はよっぽど精霊王のことを尊敬し、大切に思っているのだろう。精霊王のことを話す3人は心の底から楽しそうで、幸せそうだ。
歴代の精霊王がどのような形でこの森を守ってきたのかはわからないが、普通の国で考えると、王様が毎日国を見回るなんて考えられないことだ。王様はそれほど精霊達を大切にしているのだろう。
そんなに素晴らしい方なら、この森に来た挨拶として、是非会ってみたいものだ。だが、力が弱くなっているのであれば、あまり近寄らないほうがいいかもしれない。無防備の王様に私のような不審者が近づいては、不安になる精霊もいるだろう。私とて警戒されるようなことはしたくない。けれど。
「やっぱり、挨拶……したほうがいいのかしら。お偉いさんに」
楽しそうなところに割り込んで悪いなとは思ったのだが、いつまでも3人とここにいる、というわけには行かないだろう。それでは私はいつまでも不審者のままだ。立場の上の人にあって、後見を受けるべかではないだろうか。
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