第13話

 過ごしにくい空気が流れる。こうなってしまうと思ったから、精霊達は話すのをためらったのだろうか。誰も何も話さない時間が静かに続く。

「ね、ねえ」

 その空気に耐えられなかった私は、3人に声をかけた。空気は変えられないだろうが、一つ疑問に思ったことがあるのだ。

「どうして私は森から追い出されないのかしら」

 その理由がやっぱりわからない。精霊達の情報は言い伝えられたものしか知らないのだから、当たり前か。

 私が尋ねると精霊達は俯いてしまった。聞いてはいけない質問だったのだろう。私は慌てて何かを言おうとするのだが、何を言えばいいのかわからず自分も俯いてしまう。そして、また誰も話さない。それどころか先ほどよりも空気が重く感じる。

「……そうね。話してはいけないことではないと思うから、話すわ」

 一番最初に声を発したのは風の精霊だった。顔を上げた彼女は、悲しそうな顔をして笑っている。やはりまずいことを聞いてしまったのだろう。謝らなければ。けれど私の口から謝罪の言葉が出る間も無く、風の精霊は無理のある笑顔を作った。

「私達精霊にはそれぞれの属性を取りまとめる、力の強い五大精霊というものがいるの」

 風の精霊はため息をつくようにそういう。続いて、水の精霊が口を開いた。

「その上にいるのが、精霊王様よ。一番力が強いの」

 精霊達にも貴族のような存在がいたのか。精霊達はそれぞれ自由に生きているのかと思っていたが、それは違ったらしい。どうやら精霊達も国のようなものを成しているそうで、それぞれが好きな場所で好きに暮らしているわけではないようだ。

「その五大精霊様達の力が、今、とても弱くなっているの」

 私は思わず口元を手で抑えた。力の強い五大精霊の力が弱くなっているということは、国であれば兵士達が動けなくなったも同然だ。戦力がないのであれば、仲間や国を守ることは難しくなる。

「五大精霊様の力が弱くなると、精霊王様のお力も弱くなるの。五大精霊を守ることに力を割いてしまうから」

 大変だ。五大精霊の力が弱くなったら、最後に残る最大の戦力は精霊王なのだろうに、それでは国を守る力が全くなくなってしまう。

「それなら、余計私みたいな侵入者は追い出してしまわないといけないんじゃ……」

 何をするかわからない人間を、国を守れなくなってしまった今、森の中に留めておくなんて、考えられない。そもそも、私なら国に入ることすらできないようにしてしまうだろう。それなのに、どうして……。

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