log__追憶


「今日から妹になりました菊池 めぐ改め竹田 愛です! よろしくおねがいします!」


 ふたりのお姉ちゃんはあまり笑わない人だった。

 お洒落にもあんまり気を遣わない人で、お化粧もしなくって、髪の毛も伸ばしっぱなし。でもすごく勉強は出来て、ふたりとも頭のいい大学に行ってた。

 メグじゃ絶対入れないとこ。

 メグは馬鹿だし正反対だって思ったけど、でもちゃんとお手入れして笑えば可愛くなるんだろうなって思った。


 けどそんな見た目を気にしないような二人が女の子になる時があって、それは乙女ゲームをやってるときだった。アニメのキャラみたいなのと恋愛するやつ。

 攻略だとか隠しキャラとかイベントとかよく分からないこと楽しそうに本当の姉妹で話し合ってて、メグも家族になったから交ざろうしたけど拒否された。


 ──「あんたには関係無い」

 ──「邪魔だからあっち行って!」


 そんな言葉慣れてたから気にせず笑っていっぱい話し掛けた。

 休みの日はゲームばっかりしててお外に遊びに行かないしお洒落もしないから、家族で遊びに行こうって誘ったけどウザいって言われて結局いつもパパとママとメグの3人だった。


 「その色似合わない、こういう方が似合うよ」

 「せっかく女の子なんだからお化粧ちゃんとしないと勿体ないよ」


 お洒落するだけで魔法がかかったみたいに可愛くなれるのに全然興味がないから、すこしでも可愛くなってもらおうと思ってメグなりにアドバイスしたの。

 仲良くなりたかった。だって家族になったから。

 メグのママも可愛くなったんだし、ママにも『こんなに可愛い娘が二人も増えたのよ!』って思ってほしかった。

 でもウザかったみたい。


 ──「何でうちの学祭来たの!? 先輩にアンタを紹介しろって言われたんだけど! あたしずっと憧れてたのに……!」

 ──「アンタっていっつもそう! 私達のこと馬鹿にしてるんでしょ!? 自分が可愛いからって調子に乗って!」


 そんなこと無いって否定しても信じてもらえない。

 いつもそう。

 たまに思っちゃうの。

 なんでメグのせいにするの? って。

 だって自分のせいだとはみんな言わないの。

 メグは可愛いくなりたいから、小さい頃にみた絵本のお姫様になりたいから、お洒落するの。

 別に誰のためでもない。

 メグのため。ママは別だけど。

 だって家族だから。

 パパだって出来たし、もっと可愛くしてたい。

 お姉ちゃんたちも家族になったから、だから……。


 ──「アンタのこと別に妹だと思ってないから! どうせ血なんか繋がってない赤の他人だし! 先輩のことだってわざとでしょ!?」

 ──「何でお父さんもあんな女と再婚したのか信じられない! こんな馬鹿な家族恥ずかしいだけじゃん!」


 それでもメグは笑うの。

 だってそのほうが可愛いから。

 可愛いなら馬鹿でもいい。


 でもママのことは馬鹿にしないで。

 ママはいつも笑顔で頑張ってた。メグのことを絵本みたいな立派なお姫様になるようにって育ててくれた。

 ママのこと何も知らないくせに馬鹿にしないで。


 だから、初めて怒っちゃった。

 そうしたらお姉ちゃんふたりに叩かれた。

 そのとき着てた服が、パパに貰った大事なお洋服だったから傷付けられるのが嫌で必死に守ってた。

 その後は覚えてない。

 たくさんの思い出が詰まった大事なお洋服たちはどうなっただろう。





 お姉ちゃんたちは今も画面の中を見ているのかな。

 憧れてる人がいるのに画面の中ばっかり夢見てて。なんで画面に向ける表情かおを前を向いて出来ないの?

 画面の中のヒロインでさえ笑ってるはずなのに。

 なんでメグのせいにするの?

 メグには理解できない。

 だって馬鹿だから。


 でも可愛くないなら馬鹿でいい。

 メグは馬鹿でいいの。

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