第23話 〜"心"編①〜

 「新しい麻酔銃、良かったよ。いやあ、今回は手こずったけど、夏やお前のメカに助けられた。ありがとう」本社の実験室で、岡田が開発した全身マッサージ機に乗りゆったりしながら、吉野が言った。

 「あぁ、指先麻酔銃な。名前がちょっと変だけど、お前が付けたから許してやろう」岡田はSAKEのデータを整理していたため、吉野の方を見ずにそう言った。

 吉野はフッと笑った後、「あ、そうだ。今度学校で授業参観があるんだ。お前も見に来ないか」と岡田を見た。

 「俺が?誰のフリして行くんだよ」

 「俺の弟。それか従兄弟とか?一応身分証明書は用意してもらうよ。再来週の金曜日と土曜日。明日詳細のプリントを持ってくるから、予定確認しといて」

 「ちょっと待て。俺がお前の弟?」

 「それが妥当じゃないのか?」

 「お前の身長は171cm、俺は181cm。俺の方が兄貴っぽいだろ」

 「兄弟に身長は関係ないだろう。世の中には兄の方が小さい例もたくさんある」

 「俺の誕生日は8月。お前の誕生日は10月。俺の方が年上じゃんか」

「たった2ヶ月の差じゃんか!」

 

 「はい、出来たよ。岡田の身分証明書」

 「サンキュー、すーたん」吉野は杉浦から運転免許証を受け取って確認した。

 結局岡田は吉野の兄として授業参観に行くことになった。参観する授業は1時限目の数学と2限間目の道徳だ。岡田は午後の方が頭が働くし、夏が受ける道徳を見てみたかったため、この時間になった。

 「夏、道徳できるの?」杉浦は心配そうに、吉野に聞いた。

 「まあ、できるっちゃできる。谷川茜の人格が入ってるからな。自分の言葉で書くのはできなかっただろうけど、今回の任務ですごく人間らしくなったんだ」

 「夏の完成形は人間って、前に岡田が言ってたけど」

 「人工的に作られたのは間違いないから、ずっと人造人間だ。ただ、自分の心が形成されてしまうと、SAKEは消滅するらしい」

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