第22話 〜"裏切り者"編⑦〜

 すると、外で男たちのうめき声がだんだんと近付いてきた。また、人が倒れるバタッバタッという音も聞こえる。

 「なんだ?」と香取は外を見ようとしたが、その時にはもう遅かった。

 外で約20名の男をさっさと倒し終えた夏は、既に部屋に入っており、人差し指の指先を香取に向けていた。

 「やはり君だったか。未成年なのにあんな悪い会社で働いて、どういうことなんだ?両親はどうした?指先を向けただけで何ができる?」

 「母親はいません。父親はUNTOにいます。指先を向けただけであなたの意識を失わせることができます。私が会社で働いていることについては説明が面倒なので省きます。」

「なるほど。君は父親が働く会社に巻き込まれたんだな。可哀想だとは思わないが、君の父親はどうかしているようだ。で、君の人差し指にはどんな魔法がかけられているのかな?」

「先輩、打って良いですか?」

 「どうぞ。発射!」吉野はそういうと香取を指差してにやりと笑った。

 不思議そうな顔をしている香取に向けたその指先に、パカッと直径5mm程の穴が開き、そこから麻酔銃が発射された。その麻酔銃は見事香取の額に命中し、夏が指の方向を変えると他の男たちにも命中した。

 名付けて、「指先麻酔銃」。首から上のどこかにさえ当たれば、細胞をくぐり抜けて脳に到達し、特定の(この場合はUNTOに関する全ての)情報・記憶を抹消することができる。また気絶状態になるため、持ち運んで頭の中を覗く事もできるという便利物。ちなみに頭の中を覗くというのは、専用の装置を頭に付け、頭の中で尋問を行うということだ。頭の中では装置と麻酔銃に含まれた薬の作用で、何でも本当のことが言える。相手はその間、ぼーっと夢を見ているような状態だ。

 

 香取の脳内の記憶・情報を抹消し、脳内を覗き込んだ後、吉野と夏は普通通り学校に通い、証拠を提出して香取を警察送りにした。もちろん裁判の判定は有罪で、もちろんもう学校には戻って来れない。

 幸い磯辺の怪我はどうってことなかったので、すぐに新しい任務につかせることができた。

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