第20話 〜"裏切り者"編⑤〜
「…つまり、俺と夏のことは言ってないんだな。良くやったぞ」
「香取の連絡先もゲットしました。でも、あいつは暴力団や詐欺組織など、様々な犯罪組織と繋がっているようです」
「で、これからどうするんすか?」いつも通り相談室で、絵石が吉野に尋ねる。
「とりあえずお前と重時と磯辺は撤収。その後気を抜いた香取がまた悪事を働くのを待って、通報する。もう知り合いの検察官に話は通してあるし、有罪判決にはなるはずだ」
「でも、一気に辞めたら怪しまれるんじゃ?」
「重時と磯辺は明日で研修期間が終わる。お前は、重時から香取に辞めさせるよう言わせる」
「つまり俺だけ解雇ってことっすか?」
「まあ表向きにはそうなるな」
「はぁ…あ、でも、生徒の1人はどうするんすか?まさか、誰か退学させるなんて…」
「1年生の中で、父親が近畿に行く生徒が1人いてな。証拠取り終わったら夏を出すし、その後香取の記憶を塗り替えればいい」
「まじ怖いっすUNTO」
絵石が真顔でそう言うと、吉野は60%の笑顔を浮かべた。
それから1週間後、証拠が何も見つからずこのままでは逆に危険なので、撤収することになった。絵石は解雇してくれ。と重時が香取に伝えたため、無事に新人3人は撤収することができた。
香取はその後すぐに生徒への暴行、盗難をするようになり、吉野はそれを隠しカメラにばっちり収めた。
「ボス!吉野先輩!大変です!」吉野と神田がUNTOの一室で香取を通報しようと作業していると、重時が部屋に駆け込んできた。
「そんなに慌てて、どうした?」
「磯辺が、香取と繋がっている犯罪組織に捕まりました」
香取は、新人3人が撤収する直前の、吉野と絵石の会話を聞いていた。
いつもは用心深い吉野の失態により発生したこの事態だが、今は誰も吉野を責める時間はなかった。
「要求は何だ?」吉野は机に置いてあるスマホに向かって、低めの声で言った。
「証拠を全てこちらに渡せ。俺のことを警察にチクるな。後は金。2億用意しろ。あとー…武器、人材。特にお前が欲しい。優秀なんだろ?」スマホの向こう側で、香取の声が聞こえた。
「飲む。」スピーカー機能で話を聞いていた神田の答えははやかった。
また、それを聞いて驚きつつも高笑いする香取の声が聞こえるのも、はやかった。
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