第16話 〜裏切り者〜編①

 金曜日の19時、UNTOの本部の一室で、学校での仕事を終えた吉野と杉浦が話している。

 「中々調査が進展してないみたいだね」今週の調査報告を一通り確認した杉浦が言った。

 「俺の腕前が落ちたとでも言いたいのか?」吉野は、少しイライラしていた。

 「いや、違うよ。今回は、比較的大人数で任務をやっている訳だし、何かあると見て間違いないだろう」

 「例えば、スパイや裏切り者がいるとか」

 「でも、誰が?UNTOにそんな奴がいるなんて、信じられないよ」

 「俺だって信じたくないけど…自分がこういう仕事してるから、人のこと言えないっていうか…」

 「まぁ、そうだよな。犯人は、大体絞ってるんだろ」

 「学校に潜入しているのは俺以外全員後輩だからな。磯辺,重時,小瀬、3人とも疑う余地はある。ただ、ここまで香取がこっちの調査を免れているなら、会員である可能性が高いな」

 「会員リストなら、夏がデータを持ってるはずだから、それを見ればいいだろう」

 吉野は杉浦に礼を言うと、本部を出て、家へ帰った。


 「夏、会員リストを見せてくれ」家に帰った吉野はすぐに夏にそう言い、夏とパソコンを繋ぐコードを夏のこめかみにさした。

 夏のこめかみは、よく見ても全く違和感のないように作られているため、気付かれることは絶対にない。

 吉野はパソコンを立ち上げ、五十音順に並んだ会員リストを見る。

 全体で24名いるUNTOだが、会員は吉野含め10名程しかいない。

 「…おかしいな。新人なのに、磯辺の名前がある。会員って、普通もっと長く勤めたり、成果をあげた者だけだろ?磯辺って何か成果上げてたっけな?」

 SAKEがデータを共有している間、夏の思考は停止される。そのため、吉野は独り言をそこそこ大きい声で言っていることになるのだが、本人はそれに気づかないほど頭をフル回転させていた。

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