閑話 負っけんなよ、マッケンナくん③

 ここまで一気にしゃべると、マッケンナはユーマに言った。


「別に、面白い話じゃないだろ?まだ続きを話させるのか?」


「お前、まだ話し足りないんじゃないの?」


「まあ、こんな事話したことないしな」


「お前、ケーキは嫌いなんだよな」

 そう言うと、ユーマはマッケンナの前にある、デザートで頼んだチョコババナプルンアラモードキャラメラーゼを自分の方へ引き寄せようとした。


 すると、マッケンナは電光石火の早業で、そのプルンを奪うように取ると、スプーンを差し込み食べた。


「何だよ、お前の話しだと、ケーキとか飴は嫌いになったんじゃないのかよ!」


「だから、この話には続きがあるんだよ!プルンも奢りなんだよな」


 そう言うと、マッケンナはプルンを食べながら、もう一つ注文し、話し始めた。



 ~~~マッケンナの独白


 そして、まだキスをしているであろう、弟の部屋の扉を開けた。


 そこには、ムネをはだけたカナと、そのムネに吸い付くカッテルが居た。


 二人は、離れることなく、僕を見た。


 カナ・弟「・・・・・・・・・」


「お前たち、何をしている?」


「・・見てわからないかなぁ?カナ、言ってやってよ」


「うん。これは、たしか、?」


名前がエチカーナだからって・・・、ダジャレまでクソだ。

しかも、彼女に言わせるなんて。

しかも、覚えさせられた感があるし。


来てたのを察知してたのか?

コイツの魔法の能力なら有り得る。

こういう行為を密かにするために、索敵をいつもしてたかもしれないな。


「・・・・・・・」


「ドヒャヒャヒャ!アッハッハッハ!兄さん、ここ、笑うとこだよ!ほら、カナも笑え!」


「あははは?」


「ほら、こちょこちょこちょ」


「あははは、やめてよ、あははははは」


「おい!カナ、お前、本気で言ってるのか?」


「おいおいおい!カナが怯えているだろ!前にオレを殴った様に、カナを殴るのか?!」


「いや、怖い!」


「そんなこと、しねーよ」


「カナ、ごめんな、拭いてやるよ。この前プレゼントしてくれた、このふわふわタオルでね」


「ありがとう」


「はははは、カナは可愛いな」


 プレゼントだと?

 僕・・いや、オレはそんなモノ貰ったことがねーぞ!


「おい、お前ら、いつからだ?いつからそんな関係になった?」


「いつからだってさ?カナ、最初キスしたのって、いつ頃だっけ?」


「うんと~、出会った年にしたよ」


「はあ?そ、そんなこと、初耳だ・・・」


「まあ、そんなこと、言いふらす話でもないからね、なっ?カナ!」


「うん・・・・・・」


「まあ、そういうことだから、詳しい事は後で話すよ。カナ、行こうぜ、そろそろ授業が始まるぞ」


「うん、それじゃあ、マック、またね」


 二人は、手を繋いで行ってしまった。


 カナは、もう、オレの知らない人間になっていた。


 全然、罪悪感とかがない。


 この2年で、あからさまにオレの目も気にせず、アイツの女になっていた。


 カナの目には、オレなんか映っていない。


 いや、もう、出会った年の頃から、ずっとアイツしか見てなかったんだ。


 あれ?だったら、なぜあのような事件(虫が入ってるとかの)が起こった?


 カナは、って言って来たんだよな?


 触るのを、あの頃は嫌がっていたんじゃないのか?


 その日、オレは、アイツ等と会いたくなかったので、夜遅くまで飲みに行った。


 まだ酒に弱かったので、あまり飲めなかったから、酒の肴で腹と心を満たそうと、なけなしの小遣いを使って、たくさん食べた。


 でも、心を満たすことが出来ず、そのあと、外を走った。


 酔いがまわり出して、外の寒さが心地よかった。


 すると、雪がチラチラと舞ってきた。


 明日は、このままいくと積もるかな、とか思った。


 雪のチラチラがだんだん、霞んできた。


 あれ?


 雪が雨に変わって来たのか?


 瞬きをする。


 顔が冷たくて感覚が鈍感になってきたからわからなかったけど、オレ、今涙を流してるのか?


 頬を伝ってきた涙が口の中に入る。


 ああ、こんなことがあったよな、昔。


 その時、急にあるフレーズがリズムを伴って口をついて出た。


 ネェーネェーは死んだ、ネェーネェーは死んだ・・・・。


 それは、悲しいリズムだった。


 そうだよな、死んだんだ。


 死んだ・・・カナカナは死んだ、カナカナは死んだ・・・カナ・・・好きだったよ・・・・姉さんが居なくなってから、あの笑顔で何度もオレの心を温めてくれた・・・あの笑顔・・あの笑顔はもう、オレには向けられない。


 いや、あの笑顔はもう、この世には無くなったんだ。


 オレの知ってるカナは死んで、もうどこにも居ないんだよ!!


 そう思うと、涙が止まらなくなった。


 オレは、走るのを止めていた。


 寒い。


 でも、帰らなきゃ。


 アイツの居る家に帰らなきゃ・・・。


 その夜遅く帰ったオレは、その翌朝から熱を出して寝込んだ。


 やっと起き上がれるようになった時、カナが見舞いに訪れた。


「マック、心配したんだよ。具合はどう?」


「・・・出てってくれないかな?ゴホゴホ・・ごめん・・・悪いバイ菌をうつすといけないから、早く」


「うん・・・はやく、よくなってね。これ、わたしが作ったんだ。体調が良くなったら食べてね」


「ああ、ありがとう」


 カナは、無自覚のようだった。


 たぶん、アイツが大人の頭を使って、ゆっくりと洗脳教育をしたんだろうな。


 ホントにクズだ。


 あんなに素直ないい子なのに。


 だから、アイツの手に落ちたともいうけど。


 もう、オレには彼女に何もできない。


 あんなの見たら、ムリだ。


 思い出すだけで、吐きそうだ。


 話したくもない。


 顔も見たくない、声も聞きたくない。


 彼女の持ってきた籠には、クッキーが入っていた。


 自分で焼いたのが想像できる形をしていた。


 あんなことが無ければ、嬉しくて涙が出るだろうが、悔しくて、吐きそうで涙が出た。


 籠の中には、手紙が小さく折りたたんで入っていた。


 オレは、それを広げて読んだ。


 広げた時に、紙が光ったので、魔法が掛けられてるようだった。



 拝啓

 兄上。


 ご機嫌うるわしく。

 どうだい、カナを奪われた気分は?

 かなしいかい?

 なぜ、カナはこんなことになったのか、知りたいでしょう?

 優しいオレ様が教えてやるよ。


 そうだな、まずは、最初の頃からするかな。

 カナは兄さんが好きだった。

 オレがムネをタッチすると蹴られるし、キスしようとすると、叩かれた。


 逆に燃えたぜ、オレは!


 兄さんがオレにお菓子を良くくれるだろ?

 よく余るんだよな。

 それで、それをエサに使って、カナにゆっくりとイヤらしいことにチャレンジさせたんだよ。


 気が強いって言っても、何も知らない子供だからな、彼女は。

 ついでに言うなら、兄さんよりもオレのほうがそういう知識は豊富にあるからな。

 オレもいろいろと知識を増やすのに熱心だったよ。

 読み物は、兄さんは冒険物に凝っていたけど、オレはそんな兄さんをまだまだ子供どと思って見てたよ。

 オレの胎教は、兄さんよりスパルタだったし、大人な行為も何度も見たし、その時の感情も理解したよ。


 男も女も、結局はヤリたいんだよ。

 どんなに気持ちが良いかは、経験済みだからな、胎児の時に。

 オレは、自分の心に忠実なだけさ。


 兄さん、あんたがオレを生み出したんだよ。

 兄さんの胎教はオレという天才を産むための実験だったんだ。

 あんたは、ただ、データを取るためのモルモットだったんだよ。


 だから、そうだろう?

 胎教では親からの過度の感情はブロックされたり、読み聞かせも子供っぽいモノだったり。

 だから、子供なんだよ、考え方が。

 オレは、生まれながらの大人さ。

 母さんからも父さんからも早くからいろいろと手ほどきを受けたさ。

 兄さんには内緒でな、くははははは。


 でも、ホントに死ぬほどの魔法を掛けられたり、掛けさせられたりしたんだぜ、あんたには、そんな苦しみは胎児の頃も赤ちゃんの頃もなかっただろうけどさ。


 さぁ~てと、まずは、ごめん。

 プレゼント、カナからいろいろ貰っちゃってごめん。

 ついでに、あんたへ渡してくれと頼まれたもの全部オレのもんにしちまってごめん。

 兄さんのモノは、カナと同じで、オレのモノだから、いいよね。


 さてさて、あの虫の事件は、もうわかったかな?

 あれは、もちろん、オレが仕組んだのさ。

 カナに、兄さんに言ってくるように命令したんだよ。

 まずは、それが事の発端だったよな。


 だいたい、カナのムネなんて、あの頃には触り放題だったわ!

 まだ、幼いムネだから、別に面白くなかったけど、あんたに隠れてしていることがオレの心を満たしてくれたんだよ。


 でも、これからの事を考えても、確実にオレにカナの感情を向けさせるには、カナのあんたへの想いをくじかせる必要があったんだよ。


 それでだ。

 今までムネを触ってもそんな事を言わなかったのに、急にムネを触る時に虫がいるとか、虫がついてるからとかをオレが続けて言うようになったんで、カナはそう言われるのが実際に嫌で困ってたんだよ。


 だから、カナに、って兄さんへ言って来たら、オレはもう言わなくてよくなるからって騙して、言わせたのさ。

 何も、ウソを言わせてないからな。

 彼女も、もちろん、そういうことを言うのに抵抗はなかったはずだぜ。


 後は、予定通りに事が運んだのさ。

 でも、まさか殴られて口から血が出るなんて調子が良い事になるとは思わなかったぜ。

 せいぜい、暴力をふるわせて、カナに目撃させるくらいにしとこうと思ったんだけどな。


 あはははは、虫をカナの服に入れたのがあんたって事で、カナはもう、オレにべったりになってさ、逆にうざかったわ。


 そして、カナはもう、オレの言いなりよ。


 最近は、ムネも膨らみだして、オレの大人の機能ももう少しで開花するだろうから、また楽しくやれそうだぜ、あはははは。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る