第132話 王国との定期戦⑧
次の試合はカッテルvsリッター。
カッテルが様々な魔法を駆使するも、リッターの素早い剣技と身のこなしがそれを上回り、帝国の勝利となる。
続くセーラvsフィーナ。
フィーナは幻獣使いだった。
だが、対戦相手との相性が最悪だった。
フィーナは幻獣を出したが、すぐに操作不能となり幻獣は消えてしまった。
セーラは魔眼をできるだけ秘匿しているし、魔眼の性質上、何が起こったのかがわかりにくい。
それ故、フィーナは幻獣を操ることが出来なかった原因は自分の体調不良にあるとして、すぐに棄権してしまったのだった。
幻獣使いは、自分自身が攻撃されると脆いので、幻獣に守らせたり、強固なシールドを張って自分自身を守るのだが、セーラの魔眼には通用しなかったようだ。
セーラの魔眼は以前より強力になってきていた。
とくに、精神に作用して拘束や魔法の無効化に威力を発揮する。
トーマと違うのは相手の瞳に自分の眼が映ることが発動条件となっている点であり、それはトーマとは作用機序が違う事からも明らかである。
トーマの場合は、相手の精神ではなく、魔力や魔法陣などを捉えてそれに干渉できるチカラを持っているし、他にもあるようだ。
しかし、セーラも瞳に映すのではない魔力干渉については鋭意練習中ではある。
これで対戦成績は2対2となった。
そして、最後にサヤカvsトーマ。
~~トーマ視点
オレは、まずは、出方を伺う。
サヤカって、どう戦うんだ?
サヤカはハゴロモを召喚するのかと思ったが、しない。
代わりに、自分の周りに聖結界を張る。
オレに対して聖結界か?
思わず、笑ってしまった。
もちろん結界の中へ入ろうとして瞬歩を使い、驚かせようとしたが、弾かれた。
なに?
オレ、勇者じゃないのか?!
そして、体勢が崩れたところを狙って、聖魔法による小さな魔法陣がいくつか展開し、多数の小さい光弾がオレへ降り注ぐ。
えっ?
ちっちゃ・・・けど、これはこれで対処が難しい。
やばいかも?
思考加速と瞬歩で躱すが、何発かはオレに着弾した。
しかし、足止めされている間に、サヤカは、オレの後ろに回り込んでいた。
最後の数発の光弾をオレが躱す前に、試合前に選択した細剣をサヤカは投げた。
オレは、もちろん、シールドを張っていたので、光弾の軌道がオレの顔面に来ようが関係ない。
しかし、飛んで来る細剣が見えにくい。
とにかく、シールドを強化しまくり対処する事にした。
その時だった。
オレの左の魔眼が映像を一瞬映すと、音声が聞こえた。
「助けて・・・魔王様・・・」
すぐに音声も途切れた。
ルナだった。
サヤカの細剣はシールドに撥ねかえされていた。
オレは、思考を加速させる・・・考えろ、オレ・・どうしたらいい?
サヤカは、オレを睨みながら、魔法を放とうとしていた。
後夜祭とか、そんなモノに出ている余裕はない。
だったら・・・・。
サヤカは、また光弾を放ってきた。
小さいし、少ない。
でも、オレは、全てを身体に受けて、蹲る。
『サヤカ、細剣を拾え。そして、オレを刺せ!』
『何を言ってるの?気が狂ったの?』
『早くしろ!』
『なんでよ!そんなの、できるわけないわよ!』
オレは、しびれを切らし、瞬歩でサヤカの細剣を拾うとサヤカに向かって行った。
サヤカのシールドは強固だった。
細剣を当てたら、キンと鳴って弾かれる。
オレは、細剣を落とした。
『早く、拾え!』
サヤカは、細剣を拾ったが、オレに攻撃をしてこない。
オレは、魔眼でサヤカのシールドを無効化すると、サヤカに接近し、隠し持っていた短剣を突き出す。
サヤカは、シールドが破られたので一瞬驚いたが、すぐにオレの短剣を弾く。オレは、勢い余った態勢で、サヤカの身体にぶつかった。
その時、誰にも見られないように、オレはすぐにサヤカの持つ細剣の刀身を掴むと、オレの腹に深く突き刺した。
「えっ!!トーマ、何を」
「イタイ・・・オレは意識を失うかもしれないが、何とかしろよ」
オレは、そう言うと、身代わりさんを握りつぶし、更に刀身に力を込めて、腹を切り裂く。
血が溢れるほど吹き出し、ちょっとヤバいかもとか思いながら、倒れた。
それからは、オレは救護室のベッドに寝かされ、サヤカのヒールを受け傷は回復した。
しかし、血が結構出過ぎたため、絶対安静ということになった。
意識は、サヤカの癒し効果ですぐに戻ったが、少し、頭がふらつく。
でも、こんなのは大したことはない。
なにせ、オレは魔人だから丈夫だ。
サヤカが用意したマズイ薬湯を飲み込み、自分の魔力を全身に行きわたらせ、体細胞を活性化させる。
それから、クモからの情報を確認する。
『わかったか、カレン?』
『おおよそね。でも、向こうも、それなりに情報を得ているハズよ。もう少し、探った方が』
『時間がない。ギルもどうなっているかわからねー。今回は、普通のドッペルゲンガーではなく、無口で良いから多少自我があるヤツをここに残さないとバレるぞ。やれるか?』
『できるけど・・・アノン、あんたがしなさいよ。今回は魔族領で事が起こったから、ドッペルの管理までやってられないわ。下手をすると、私も全力を出さないといけないかもよ』
『仕方が無い。我が行おう。しかし、聖魔法ならともかく、今の魔王のチカラだけで大丈夫か?』
『アノン、オレは魔族だ。だから、魔族を殺したくはない。だから、魔王のチカラだけでやらないとダメだ。オレは、魔族を統べてくるぞ。そして、ミーシャを助ける』
『ついに、名実ともに魔王になるわけね。やるしかないわ』
『よし、行くぞ!』
オレは、仮面をつけ、魔族領で操るクモで、ルナの場所に近いヤツの所へ転移した。
オレは、周りを警戒しつつ、ある大きな木にルナが括りつけられているのを発見する。
ワナの危険性があるので、魔眼で周囲を索敵した。
何人か居る様だが、オレを警戒する感じはなく、動きも変化が無いようだった。
オレは、それでも、ルナの周りにワナの魔法が仕掛けられていないかを確認しつつ近づく。
ルナがオレを見つけて、念話ではなく、小さな声で「ワナですから、逃げて」と言う。
でも、そんな事が出来る訳がなく、オレは、今度は素早くルナに近づくと、縄をほどき、そこから一緒に逃げようとするが、動けなかった。
それに、魔法封じまでしているのか?
ルナが念話が出来ないのはそのせい?
「えっ?動けないぞ、どうなってるんだ?」
「だから、ワナだと言ったんですよ」
そう言うルナは、醜く歪んだ笑顔をして、オレに変わった剣を突き付けていた。
「うふふふふ、上手くかかったわね、魔王を語るニセモノさん」
いつの間にか、ミーシャが笑いながら近づいてきた。
「やりなさい、ルナ!」
「死ね!魔王のニセモノ!私たちを騙そうなんて、ホントにバカだよね!これは、破魔の魔剣。仮に魔王でもこれを使えば死ぬのよ!死ね、死ね、死ね!!」
ルナは、持っている剣でオレの腹をめった刺しにした・・・・。
やられた・・・ホントにバカだ、オレ。
オレは・・・・・。
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