第107話 学年末実技試験
オレ(トーマ)は、能力向上のために、まだまだ試行錯誤中だった。
死ぬほどの苦しみを味わった時に呪いが解けるだと?
死ぬほど修行するしか・・・・。
そう思い、オレは、授業も最近は出ずに、死ぬほどの修行をしている。
しているんだけど、オレは魔族の身体。
そして、魔王にして勇者だ。
身体は強化されて、オートに防御機能が働き、身体は守られ、そう簡単に死ねない。
最初の解呪は、身体を追い詰めたらできたかもしれないが、この身となった今は、それが難しい。
いったい、どうしたら?
前回は、心も魔力も偶然、暴発して解呪が成されたが、アレは事故みたいなもので、しかも、やはり身体に死ぬほどのダメージを与えようとした結果だ。
つまりは、身体を死に追いやった結果の産物。
だったら、また・・・・・。
でも、どうやって?
死ぬほどの苦しみ・・・・苦しみ・・・・オレはどう言う時に苦しいんだろう?
もちろん、身体が痛いとき。
病気になって、熱とかが出ている時。
あとは・・・・・サーヤを失った時?
愛する者が裏切った時?
そうか・・・・あの時、オレは死んだ。
でも、心も死ぬほど痛かった!
そうか・・・心か!
だが、それって?
オレは、やはり、出口がわからない迷宮に迷い込んだ哀れな冒険者のように、思考の迷路に陥り、手詰まり感を覚えるしかなかった。
でも、オレに、今できることは、トーマとして、幼い頃からしてきたようにがんばることしか、ただただ身体を酷使し、魔力枯渇するまで自分を追い込むことしかできなかった。
そうして、12歳も最後となる。
12歳の最後は実技試験が行われる。
オレは、欠席。
もちろん、学園長には、その辺りの忖度をしてもらっている。
そして、試験は決勝を迎えた。
学年1位と2位の対決。
前回と同じ、ジェイVSアーネだ。
話しは、少し、
オレは、この実技試験の前に、ジェイに呼び出された。
「何だよ、こんなところに呼び出すなんて」
そこはあの『恋人たちの花園』、つまり学園の庭園だった。
「トーマ、オレ・・・いや、わかってるんだ。こんなこと、お前に言う事も、オレがしようとしてる事も、全部、やってはいけない事なんだってのはな。でも、もう、抑えることなんかできないんだよ。おまえ、
「ジェイ、おまえ、アーネのことを。やはり、そうだったのか?」
「すまない。婚約者である君がいるのに、オレは彼女が好きで堪らないんだ。この気持ちを抑えられない。それが、恋ってものなんだろ?」
「でも、ジェイ、オレもアーネが好きだ。お前が何て言おうが、それは変わらない。婚約は解消できない。お前、ちょっと、我が儘すぎやしないか?」
「ごめん。でも、オレも他の婚約話しは全て断ってるし、覚悟を持って、この話を君にしてるんだ!」
「しかし・・・」
「トーマ、頼む!お前の気持ち、ホントの気持ちを聞かせてくれないか?婚約者とか、そんな事でなく、ひとりの女性として、彼女を君は愛しているのか?」
「えっ?そんなこと・・・・」
「トーマ、オレには、お前が婚約者だからって事で、彼女と付き合っている様にしか見えない!それって、彼女に対して失礼過ぎやしないか?彼女は、お前の事を真剣に思っているんだぞ!どうなんだ、お前は?お前の本心を聞きたい!」
「オレは・・・・・」
ここで、オレは、アーネの事を考えていた。
オレは、魔王であり、もう人間じゃない。
そして、勇者でもあり、オレにはこれからやらなければならないことがある。
それに、オレは命を狙われている。
はっきりとした形ではなく、それは不意打ちの事が多く、そして、まだ本気の襲撃には至ってないが、これからはそうもいかなくなるだろう。
そんなオレが、いつでも彼女を守ってやれることができるだろうか?
出来るだけの事はする。
守るって決めている。
だけど、オレから離れた方が彼女の命は危険に晒されることはないだろう。
だったら、彼女を愛しているのなら、彼女を守るのなら、彼女のためなら・・オレは。
だが・・・・それでいいのか?
『そうよ、トーマ!あなた、それは魔王の選択ではないわよ。全部、どうあろうが守って見せるのよ!それが、魔王よ!勇者は知らないけどね。アノン?』
『我は、トーマの考えを尊重するのみ』
『ふん、これだから男ってのは・・・・』
「ジェイ、オレもアーネが好きだ。そこは譲れない。だから、これからのオレの行動で、それを示してみせるよ」
『よく言ったわね、トーマ。それでこそ、魔王よ』
「トーマ、オレも、そういう事で良いか?行動で、彼女を振り向かせても良いか?なっ、それで、オレをアーネが好きになってくれたら、お前、彼女を譲ってくれるか?」
「それは・・・いや、アーネはオレの事が好きなんだぞ。お前が何をしようが、ムリに決まってるだろ?」
「でも、やってみないとわからないだろ?なっ、チャンスをくれよ。どうせ、お前に分のある勝負なんだから、減るもんじゃないだろ?」
何を言ってるのかわからんが、ジェイ、そんな事をしてもムダだぜ。
オレは、そう思った。
だって、カフェでときどき、お互いドキドキしてるし。
「まあ、いいや。勝手にやったら?オレ達の仲は誰にも邪魔できないからさ。いや、かえって、絆が深まるってもんだ」
「よし、決まりだな。絶対に、彼女をオレに振り向かせるからな」
「ああ、まあ、がんばれ」
オレは余裕だった。
ジェイVSアーネ。
さて、そんな事があっての、この戦いはどうなるのか?
オレは、別にそんな戦いで何が起こるモノでもないだろうと、冒険者としてのクエストを受けていたのだった。
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