第99話 王国との定期戦
オレは、守るって決めてるんだよ。
みんな、守る。
オレは、この命に代えても守るんだ!
オレは、かつての勇者の攻撃である瞬歩による居合斬りができるかどうか、一か八か実行しようと思った。
『できるか、アノン?』
『それは、トーマ次第だ』
『狙いは、キメラのあの腹にある顔全部だ!行くぞ!』
オレは、あの顔が弱点であり、司令塔的役割を果たしていると踏んだ。
オレは、狙い通りにグラディウスを振るう。
一太刀を横に一閃し、雷属性と聖属性を付与しているので、腹の顔を全て斬りつけて、尚且つ、その深部に聖属性の波動と雷撃を流し込む。
次に、ドラゴンの5本の首に神速の斬撃を加える。
固いが、聖属性を纏わせている聖剣にオレの魔力が加わり、首を2本跳ね飛ばす。
2本だけしか・・・・。
『くっ・・・まだ、チカラが足りない。魔力の込め方とか魔力そのものとかが、魔王のものとは違う部分があるみたいだ。聖剣に込められる魔力は、どうやら勇者や聖女達のものでしかダメなのか?』
『ふつうは、そうだが・・・トーマ、出来るかもしれぬぞ。それを今、試せ』
『でも、どうやって?・・・あっ!・・いいのか、アノン?』
『問題ない』
『聞いた通りだ、カレン。チカラを貸せ』
『いいの?あなた、彼女たちにバレるかもよ?』
『そんなこと、今は仕方がない。緊急だ。それに、一瞬だけで良い』
『わかったわ』
オレは、周りを見る。
キメラに打ち込んでから、ものの1秒も経っていない。
あの時の、勇者としての前世で最後の頃の感覚が戻ってきた。
超速思考。
オレは、左手にヴェルギリウス、右手にグラディウスを持ち、クロスさせ、残り3本の首を刎ねると共に、上空に展開するプテラノドン型の魔獣に向けて左右の剣より衝撃波を発生させ、打ち落とす。
そして、上から左右の剣よりビームを薙ぎ払うように地上のトカゲ型魔獣に放つ。
しかし、これは、まだそれぞれを使っているだけ。
着地をする。
と同時に、クロスさせた剣に念じる。
この時、剣聖にチラッと見られた気がしたが・・・。
オレは、自然に両剣に命じる。
『召喚しろ!マスターソード、ゼクシオン!』
『剣聖の剣に収束し反射させて放て!
眩く光る、光の粒が敵味方関係なく、目から目の奥へと・・・・・・。
その光は、この場の全てを包み込み、人間や魔族には癒しを、それらに敵対するモノには死をもたらした。
これにより、空と地上の残りの魔獣たちは死ぬ。
サリー「な、なにが・・・・・」
シルフィー「これは・・・・・」
ルナ「・・・・・・・・・」
オレは、全身のチカラが抜けていく感じを味わった。
『ルナ、肩を貸せ。そして、ヒールを』
しかし、キメラはそれでも回復しかけたが、冒険者と剣聖、騎士団が切り刻み、最後には炎で燃やされ消滅した。
他の場所での些細な戦闘も終わっていた。
騎士団や冒険者たちが上手く討伐したらしい。
そして、オレは、なんとか回復し、今、サリーの行きつけの場所へ来ている。
「おつかれーー!!3回目のかんぱーーーい!!」
サリー「すごかったね、アレ」
ルナ「ホントに」
オレ「ああ・・・さすが、剣聖だな」
サ「ふふふ、そうね・・・そろそろ、その本人が到着よ」
オレ「えっ!!!」
シルフィア「みなさん、お疲れ様です」
サ「よし、もう一度かんぱーーい!!」
オレは、早くこの場を離れるようにルナに言う。
シ「貴方がユーマさんですか?」
「あっ、はい、お疲れ様です」
「あの時、アナタから魔力を受け取りましたよ、私は。あなたですよね、アレをしたのは?」
「えっ?何をおっしゃっておられるのか?」
「そういうことですか。では、そういう事にしておきましょう。改めて、わたくしの名は、シルフィア=フォン=デュフォーです。騎士団に所属していますが、時々、ギルドの方にも顔を出してますので、よろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。あの、オレはこれにて」
「待って下さい。これからは、時々、私からオファーを出しますので、受けていただけますよね、もちろん」
「それが条件ですか。いいでしょう、お手柔らかにお願いします」
「うふふふ、それから、そのお面、別に外されても、私は気にしませんよ」
「そうですか。でも、これがないと、オレ、魔力の制御ができない呪いを受けてるんで、ただ顔が潰れているだけではないのですよ」
「そうなんですか?これは失礼しました」
「それでは」
『わたし、まだ飲みたいので、トーマ様、失礼します』
『ああ、またな。今回はよくやった』
『うふふふ、いつもですよ』
『お前、わかってるよな。オレのこと、黙ってろよ』
『もちろんですよ』
オレはルナにはちょっと不安だったが、サリーにはしっかりとクギを刺しておいた。
因みに、サリーはオレの事をトーマと知ってはいるが、魔王であるとかは知らない。
オレの能力は、どうなるのか?
そして、あのゼクシオンって、使い道が良くわからんのだが。
時が来ればわかるとか、いつも召喚はできないとか、いろいろと言われたが、なぜかカレンは否定的だし、アノンははっきりしないし、考えてもわからないので深くは考えないことにした。
そして、また、冒険者として、オレは能力を磨いていった。
あれから、シルフィー姉さんとは会っていない。
しかし、アーネやセーラとは、時々学園や寮を抜け出して、カフェでお茶をしたり、居酒屋に行ったりするようになっていた。
ちょっと、そこのところは、隠れながらしている感じで、ドキドキしている。
もちろん、アーネが可愛くても、ドキドキもするんだけど。
そのような時、フランツ王国の王立学園との定期戦が行われた。
この定期戦は、年に一回、代表者で模擬戦が行われる。
この模擬戦には、それぞれの国から騎士団や国のお偉いさんが見学に来る。
時々、国王や皇帝も来たりする。
今回は、ピエールは来ない。
そして、今年はフランツ王国主催で開催される。
とはいえ、両国間は片道1か月かかる。
そのため、ジャポニカ王国で行われるのが通例になった。
なぜなら、両国ともそこへは転移できるからだ。
そして、この前行われた実技試験の上位者たちが選手に選ばれる。
オレは、その選手ではないが、第一王子なので慣例として同行することになった。
ジャポニカ王国では、歓迎を受けた。
カグヤ7世は、相変わらず、素敵な女性だった。
そして、まだ、未婚だった。
カグヤ7世とお話をする。
彼女は、オレにさえ、嫌な顔はしないし、暖かな波動を感じる。
でも、それは、憐憫の情から来るモノのようだった。
今回は、上級生たちばかりなので、オレは暇なのだ。
そこで、カグヤ様に魔道科学について少し教えてもらえないかと依頼すると、国内一の魔道科学者を紹介される。
年の頃は、オレより15歳以上は年上だ。
それでも、まだ若い。
オレは、年寄りの気難しい人を想像していたが、全然違っていた。
「どうも、シンジです。よろしく」
「どうも、トーマです。お忙しい所、申し訳ありません」
「王子様ですよね。いやーー、なかなか本物の王子様って、会えないから不思議な存在ですよ、貴方は」
「そんなモノですか」
こうして、シンジと出会った。
そして、少し、真実を知ることとなる。
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