第44話 ジャポニカ王国再来訪前

 朝食後、オレは聖女達と訓練を行っていた。


 ト「聖武具に魔力を込めて、自分の意識をそれに集中させること。そして、何か一体感みたいなものがつかめてきたら、今度は、自分の心もそいつと同調させる。具体的には、太陽の光が当たって心地良いなぁと言う心地よさをその聖武具に伝え、その気持ち良さを共有する感じというか、一緒に気持ち良くなろうって感じ?あれっ?アヤカ、そこ笑わない。でも、快感を共有するイメージが一番わかりやすいと思う」


 ア「そうかー、わたし、何かやれそうな気がしてきた」

 ソ「えっと・・・トーヤのエッチ!」

 ト「はあー、だから、説明するの嫌だったんだよ。お前ら、何か奢れよな。オレ、金があまりないから」


 エ「何でないの?」

 ソ「何かに使ったの?」

 ア「あっ!みんな、それ以上追求するのは可哀想よ!ねっ、トーヤも男だし、ねっ、しょうがないわ、お姉さん、大目に見てあげるから、ねっ!」


 ト「うん?何を言ってるのかわからんし、お姉さん言うな」


 ソ「えっと・・トーヤのエッチ!」

 ソフィーがエリーになにかを言った。


 エ「わたしがいるのに、わたし、トーヤの為なら一肌脱ぐから!」

 ト「お前ら、だから、何の話しだ?」

 ア「ナニの話しでしょ?お姉さん、お金貸してあげるから」

 エ「ダメだよ、私がデートしてあげるから」

 ソ「トーヤのエッチ!」


 コイツら、ホントにバカだな。

 でも、お金は持っているのか?


 ト「君たちは、お金持ちなのか、ひょっとして?アヤカは、お金持ちの娘ってのはわかったけど、ソフィーは、オレと同じ田舎者だよな?」


 ソ「同じにしないでよ、トーヤと違って、猿と寝てません」

 ト「いつ、子猿と一緒に寝てるって言った?」

 ソ「昨日の夜、言ったじゃない」

 ト「それは、サーヤが可愛いがってたから、仕方なくだな、って、つまらん事は良く覚えているよな。もういろいろとしゃべってないで、ちゃんとやれよ。これじゃあ、いつまでたってもできないぞ」


 コイツらは、まだ、聖武具に真名まなを教えてもらっていない。

 だから、まだ使いこなせないみたいだ。


 ト「いいか?聖武具に一応は認められたからって、すぐに使えこなせるわけではないぞ。聖武具に真名を教えてもらって初めて使えるようになるんだからな。そうするためには、聖武具と一体化出来るように頑張るしか無い。これは人に言われてすぐにできるもんでもないので、自分なりに工夫してイメージを膨らませるんだ、オレが言えるのはここまでだ」


 そう言うと、オレはコイツらと別れて、ある場所へ行った。



 そこは、小料理屋で、旨い酒と気の利いた料理を提供してくれる、アットホーム?なところだった。


 その奥の小さな座敷に通されたら、すでにステファンが座っていて何かを食べながら、酒を飲んでいた。


 オレが来ると料理が運ばれてきて、酒もステファンと同じものが用意された。


 その酒はとても旨く、オレはこれから先、この小料理屋を贔屓ひいきにする事にした。


 ス「サーヤの事、ホントにごめん!僕は、あんな仕事、イヤだったんだ」

 そう言って、ステファンはことの顛末てんまつを教えてくれた。


 実は、あのパーティーにオレが来た事を知っていた、知っていてあんなことをしたんだって話しだった。

 その理由は、オレとサーヤを別れさせるため。

 更に、その理由は、聖女達とオレとが愛情を感じるくらいに親しくさせるため。

 更に更にその理由は、魔王を倒すため。


 ト「だったら、サーヤはお前の事を好きになってしまったのか?オレにサーヤとのイチャイチャをわざと見せたのだろう?」


 ス「いや、僕はそう見えるように演出しただけだ。サーヤは、お前の事をずっと好きで、どんなに僕が仕掛けてもダメだったんだよ。僕は、田舎者だからすぐに落とせると、イヤ、悪い、そう思ってたんだけど、彼女と喋って、彼女に教えて、彼女と踊って、オレは逆に彼女を応援してた。お前たちを羨ましく思ったよ。オレは、女を落とすのは得意だった。それはオレが食っていくのに必要なテクニックだった。他人の彼女を寝取って報酬をもらう事も良くあった。僕に簡単になびくような関係なら、壊してもいいとも思った。でも、彼女は違ったんだ。僕は、だから、あのパーティーの事はすまないと思っている。実は、あんなに強引にやるしか無かったので、成功しない可能性もあった。でも、こっちも仕事だから、成功する確率を上げるために、クスリまで使ってやった。昨夜、アイツらが使ったのと同じものをね。これは、オレのポリシーに反することで後にも先にもあの時だけだ」



 ト「そうか・・。そしたら、あそこでオレが見た大人キスは?」

 ス「あれは、まず、初めて教える時に口を少し開けて笑みを浮かべるのが貴族の女性のたしなみだと教える。そうして、何回も練習させるんだ。それから、唇と唇とを軽く触れるキスは上位貴族のマナーの一つの到達点で、これがうまく出来れば合格だと教える。そして、あの時は、偶然を装って、素早く、勢い余った感じで大人キスまで持って行ったのさ。薬の効果で、剣聖も不意を突かれたら動けなかったようだね」

 確かに、びっくりしてた感じだし、アイツ、顔がずっと赤かったな。


 ト「・・・その後、笑いあっただろ?」

 ス「あれは、僕が、ここで笑わないと合格点を挙げられない、好きな勇者の為にも笑ってっ」

 ト「もういい!!」


 オレは、そう言って、ステファンの顔面に拳を叩き込んだ。

 ヤツは、なぐられる覚悟をしていたのだろう、身体と顔面を強化して、更に対物バリアーを表面に張り巡らしていた。オレの拳の方が痛かったハズだが、大げさに吹っ飛んでオオッとか言って演技をした感じだった。


 コイツ!

 加減せずに、もっと力を込めて殴ればよかった、とも思ったが、そもそもコイツに命令を出したのは、シモンかピエールだ(直接の上司はシモン)。


 オレは、ピエール達に計り知れない怒りがこみ上がるのを感じた。


 アイツら、絶対許さん!!

 今は魔王討伐のために仕方なく従っているが、それが終わったら、どうしてやるか・・・とにかく、単なる謝罪とかで済む問題じゃねー!


 オレ達が平民なら何をしてもいいのか?

 貴族や王族達、コイツ等はクソだ!

 オレは、アイツ等の言いなりには、ならない!



 あっ!!少し、冷静に考えられるようになったら、マズイ事が・・・。


 ト「おい、ステファン!手紙くらい、アジャ村まで持って行けるよな。そのくらいの事、オレはお前に頼んでも良いよな」

 ス「ごめん、勇者。僕は今回の仕事を最後にこのフランツ王国を出て行くんだ」

 ト「えっ?どこに行くんだ?」

 ス「それは言えないけど、勇者の魔王討伐を陰ながら応援するから」

 ト「お前、魔法も身のこなしも、タダ者じゃないだろ。だったら、オレに協力しろよ。給料はないけど」

 ス「ごめんね、勇者。また会うことがあったら、絶対に君に協力するからさあ。でも、その手紙は然るべきスジのところに託すから安心して」

 ト「じゃあ、今から書くから、頼むぜ」


 こうして、ステファンに手紙を託した。


 いや、手紙を書くなんてのは簡単だ。


 サーヤ、怒ってるかな?

 指輪、捨てたかな?

 ルーシー、怒らないかな?それとも悲しむかな?それとも喜んでくれるかな?


 いや、こういう場合は、最悪を考えて行動し、覚悟を決めとかないとダメージを食らった場合にダメーじゃ~って、アヤカが言いそうなダメージを受けそうだ(何を言ってるのか?)。


 ト「ところで、シモンとかは、本気でオレと聖女をくっつけるみたいな事をしようとしてたのか?」

 ス「そのつもりみたいだったけど、でも、確かに、聖女たちと勇者との出会いとかほぼなかったような・・・」

 ト「最初の謁見の時に見ただけだぜ、会話もなし。それでいきなり一緒の馬車でサリュートへ行けとか、アイツ等、何を考えてると思う?お前の意見を聞きたい」


 ス「僕の意見?僕を信用してくれるの?」

 ト「オレ、友達いねーし、取り合えず、お前を信用してみるよ。お前、確かにウソをついてるかもしれん。でも、アイツ等を助けるメリットって、オレに信用させることぐらいしか思いつかん。でも、お前は、もうアイツ等との契約?は終わり、別の国へ行くんだろ?」

 ス「いいの、そんな風に即断して。だいたい勇者って、よく考えてるようで、早とちりしてるんじゃないの?僕を信じて大丈夫?」


 ト「あのな~、確かに昔はそうだったよ。でも、オレ、今勇者になって、聖剣を少し使えるようになって、魔力の色とかその人間とかの性状がちょっとはわかるようになったんだ。まあ、それ以上は機密事項だから言えないけどね」

 ス「ふ~~~ん、さすがは勇者だなあ~」


 それからは、いろいろな話をした。

 コイツは、小さい時から苦労したようで、オレの知らないことをいっぱい知ってたし、話しがうまかった。


 そして、ここの料理と酒もうまかった。


 聖女たちを連れてこようと思った・・・もちろん、金はアイツ等が出すという事でね(笑)







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