第43話 聖女たちの危機


 ~~~~~~~~ソフィー視点続き


 明日の朝食後にトーヤを誘い、訓練しようということになった。


 と、そこに、かつての個人教師シューマン、ニューマン、レーマン(エリーの個人教師だった)がやってきた。


 シュ「どうも、お久しぶり」

 ソフィーたち「お久しぶりです」

 シュ「君達、折角、フランツに戻って来たんだから、この前できなかったし、君達の激励会とお別れ会をしようと思ってね」


 ソ「えっと、ありがとうございます。あの、私たち、まだまだ修行中の身なので、その、なんか悪いです」

 シュ「いえいえ、貴女たちは頑張りましたよ。そして、とても貴族らしさが身についてきたと、こちらも上達の速さに驚いているんですよ」

 ソ「えっと、それはありがとうございます」


 ニュ「聖女様達はいつもがんばってるんだし、たまには息抜きが必要だとマーガレット様が仰っていましたよ。実際、聖女様達はよくやっておられますよ」

 レ「でね、ちょっと飲んだり、食べたりするだけだからさあ、折角みんな揃ってるんだし。我々も次の任務でなかなか揃わないんですよ。こうして、みんなが偶然にも顔を合わせたってのも女神様の御業みわざかもしれませんよ」


 ソ「それもそうですけど・・・」

 ア「ここまで仰られたら、行かないわけにはいかないじゃない?(どう、このダジャレ?)」

 エ「そう?行きましょうか?」

 ソ「うーーん、そうね・・・」

 ア「いやいや、でも、わたしたち・・・」

 ニュ「アヤカはさっき、行かなくちゃって言ったよね?」

 レ「うん、そうそう、言ったよね」

 ア「あれは・・・いつもの・・(なんでダジャレって気が付かないのよ、トーヤ居ないし)」


 ソ「そうですね、では、少しだけしか付き合えませんがよろしいですか?」

 シュ「もちろんだよ。僕たちもそんなに長い事、おしゃべりしたいけど、出来ないと思うし・・」

 レ「そうだよな、よし、行こうぜ!」


 こうして、私たちは、ある王都の街のバーに行った。

 そこは、少し照明が落とされていて、淡いオレンジ色の光が灯る、まるで恋人たちの隠れ家的な雰囲気のある個室だった。みんなは、彼らにドリンクを任せて、彼らの話を聞いていた。

 彼らも、サリュート派遣組と居残り組に分かれるみたいで、私たちにはサリュートの情報を欲しがっていた。


 そうこうしているうちに、乾杯となり、このまま飲むだけでは面白くないと、ゲームが始まった。


 一つだけ赤い印を付けたコインを袋の中に人数分だけ入れ、赤いのを引いた人がイッキ飲みをするというモノだった。


 最初に赤を引いたのはアヤカで、みんなのイッキコールに頑張って飲み干した。

 次に引いたのは、シューマンで、彼も見事に飲み干した。

 というように、うまく男女代わる代わる当たり、飲み干していった。

 一通り皆が飲むころには、いい感じで、酔いが回り、わたし、こんなに弱かったかしらと思ったが、すぐにまたゲームが始まった。


 また最初にアヤカが引き、イッキに飲んだアヤカはダウンした感じで、ニューマンにもたれ掛かっていた。

 2回目はエリーで、彼女も、顔を真っ赤にして、レーマンに・・・そして、次に私もイッキ飲みをし、シューマンにもたれ掛かっていた。


 エリーは、なぜか聖剣を呼び出し、それを抱えて寝ているようだった。

 横にいるレーマンは、その聖剣を取ろうとするが掴むことも出来ない感じで何かを言っていた。


 シューマンは、大丈夫?とか言いながら、わたしを抱きしめた。

 私の意識は朦朧もうろうとして、ヒールを掛けることもできなかった。

 彼の甘い香りが私を刺激し、彼がキスをしてくるのに、なぜか突き放すこともせず、ぼんやりと彼の唇が迫るのを見ていた。


 アヤカの方からは、チュバチュバと大人キスの音が聞こえてきていた。

 ああ、それが大人キスなんだ。

 アヤカなら、大人キスは実はおとなしくないんだよとか、言うんだろうなと変なことを考えていた。


 シューマンの唇が触れるかどうかの所に来た。

 ああ、キスするんだと、何の抵抗も感慨もなく、私は目を瞑ってしまった。


 それから・・・・・わたしは・・・・眠ったのだろうか?


 気が付くと・・・目の前に、トーヤがいた。


 えっ?なんで?

 私は、トーヤとキスをしたの?

 いや、ちがう、えっと、ナニ?


 ト「気が付いたか、ソフィー。オレのヒール、ちょっとは効いたかな?じゃあ、コイツ等起こして帰ろうか、立てるか?」

 トーヤはそう言って手を差し伸べてきたが、私はその手を取らず、代わりに尋ねた。


 ソ「あの、トーヤ・・・どうしたの?」

 ト「はい?それはこっちのセリフだよ」

 ソ「えっ?まさか、トーヤ、私にやらしいことをしなかったでしょうね?」

 私は、思ってもみないことを口走っていた。


 ト「うん?例えば、なに?そのやらしいことって?」

 トーヤは意地悪だった。

 ソ「その、アレよ、キ、キスとか?」

 ト「ソフィー、君は成長しないねw」

 ソ「えっ?なによ、それ!私だって、いろいろとがんばってるんだからね!あっ、そうだ!いつもこんなだから忘れちゃうのよね。あのね、トーヤ?」


 それから、私とトーヤは、いろいろとしゃべった。

 聖剣の事、魔力量の事、婚約者の事、故郷の事、施術院の事、ヒールの事、サーヤの事、アヤカの件、パーティーとしての戦い方について、などなど。


 彼とこんなに二人で話すのって、あまりなかったかなと思った。


 えっ?エリーとアヤカ?

 彼女たちは、隣でグーグーと寝てました。

 


 ~~~~~~

 トーヤ視点


 オレは、宿舎の食堂横にある「飲みどころ、酔いどころ、良い所」で、少しだけ飲んでいた。

 すると、あのサーヤの個人教師がやってきて、すぐに一緒に来いと言われた。

 オレは、飲みかけの酒をイッキ飲みすると、彼について行った。

 移動しながら、事の次第を簡単に聞いた。

 コイツ、ステファンというらしい。

 偽名っポイので、怪しいのだが。

 とにかく、警戒は怠らないに限る。


 しかし、あのアホたちは、何でいつも、オレの手を煩わせるかなぁと思ったが、口では言わない事にした。


 薄暗がりの、そこは、バーのようで、しかも高級そうだった。

 さっき飲んでいた、あの「良い所」とは雲泥の差だった。


 そして、その一室に入ると、すぐに、聖女の隣の男子をステファンは手刀で眠らせたので、オレも負けじと男の首筋に手刀を当て、意識を刈る。3人目の男は、逃げようと身体を起こしたがそれがアダとなり、カウンターをお見舞いした。

 ステファンと同時だった。

 ステファンは、危ない所だったと小さく呟き、男3人を拘束すると後から来た店員に彼らの事を頼み、今からこの事を報告に行くと言ったので、後日会う約束をし別れた。


 ステファン、コイツはできるヤツだ。

 そして、とりあえずは、悪い感じではなかった。しかし、訊きたい事は山ほどあったので、まだ、信用はしていない。

 アイツも言いたい事があるらしいみたいだけどね。


 そして、残された女子たちの面倒をオレが見なければならなかった。

 とくに、ソフィー・・・何で目をつぶって、口を半開きにしてんだ?

 やっぱ、こいつ、普段は賢そうな感じだが、バカなんだな。

 オレは残念聖女たちの様子にため息をまたしても吐くのだった。


 エリーとか、アヤカとかはって?こいつら、ヨダレ垂らして寝てるわ、ホント、残念な奴等だ。

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