第4章 魔族を討て!

第38話 ジャポニカ王国

 島国ジャポニカ王国へ行くためには、海を越えなければならない。

 そのため、いにしえの技術により王国へは国と国を行き来するための転移テレポートの魔法陣が存在する。


 もちろん、ジャポニカ王国と直接国交が結ばれていることが第一の条件ではあるが、そうでない国の主要な人物も他国経由で入国が許可される場合もある。


 また、転移の可否は、当然、厳正なる審査を両国間で実施し、限られた条件を満たす者だけに利用許可が下りるように取り決めが成されている。


 さて、勇者たちは、そのお付きの者たちも含めて、サリュート聖教国の転移陣からジャポニカ王国へと転移して行った。



 そして、ジャポニカ王国の女王、カグヤ7世に謁見する。

 彼女は幼くしてその才能を見込まれて、帝王教育を早くから受けて、王位継承者の中では、トップの成績を6年間取り続け、18歳にして王位を継承した女性だ。


 彼女の卵子は貴重なモノなので、すでに魔道の科学力で人工授精が試みられている。精子の提供者は、ナゾであるが‥‥。

 そういう研究が最も進んでいるこの国は、人口の8割が女性という問題をそのような研究で解決しようとしている。


 そうした事なども影響し、彼女は、愛だの恋だのを諦めてもいた。

 そのため、男性と話すのは苦手であった。


 容姿は、黒髪黒目の典型的ジャポネーゼ美人であり、長い艶のある黒髪が腰まで伸び、時々、彼女はその髪を撫でつけるのが癖である。伏し目がちな彼女は、その長い睫毛まつげで切れ長の目が隠れるため、何を想っているかが伺いにくく、突然、その知性的な瞳で見つめられると、何もかもを見透かされている様で、誰もが委縮してしまうらしい。


 カ「オモテを上げてください、勇者トーヤ、そして聖女のみなさん。私の国は、ご存じの通り、島国です。なので、交易の多くは海上輸送が基本ですが、最近、海の魔物の出現が多く困っています。我々の探査結果によりますと、海の底にある海底洞窟を住処としている魔物が我が海域のぬしらしく、それが最近暴れているようなのです。どうか、その主を勇者様のお力でしずめていただきたいのです」


 ト「お話は伺いました。ですが、我らも、まだパーティーを結成したばかりでございます。ナニブン、経験不足でありますので、どのような事ができるか、もっと、詳細に話し合ってから行動したいと思いますが、いかがでしょう?」


 カ「それは、取り合えず、前向きに考えてくださるという事ですね。ありがとうございます」


 ~~念話発動中(聖王より貰った指輪の効果)


 『エリ(トーヤ、わたし、泳げないよ)ト(バカだな、オレもだよ)エリ(あんたもバカじゃん)ト(いや、お前ほどではないぞ)エリ(なにをー)ソ(やめなさい、ふたりとも)ト・エリ(はい)ア(バカだわ)ト(お前が言うな)』



 そして、トーヤたちは、その海底洞窟の詳細とその海域のことをレクチャーしてもらい、作戦を立てた。


 そして、その海底洞窟があるという海域へ船で移動する。

 エリ「ダメだ、こりゃー、わだじ・・・おえっ!!」

 ト「きたねーぞ・・・おえっ!」

 ア「このふたり、使えないよね、ソフィー?」

 ソ「・・・・・・・・」

 ア「どうしたの、ソフィー?」

 ソ「・・・ゆすらないで・・・おえっ!」


 エミ「みんな、ダメよね、ホントに」

 ア「エミ(エミリ)は大丈夫なんだ、さすが身体の出来がちがうよ。もう、私たちだけで、ちゃちゃっと、やっちゃわない?」

 エミ「でも、ご主人様が何かお考えが・・・」

 ア「ああ、トーヤくんね、彼のことは気にしなくていいから。どのみち、まずはぬしを海上におびき出さないとね」


 寝転んで、左右に転げまわっているオレを無視して行動しようとしているアヤカとエミリだったが、まあ、アイツらに任せてもいいかなと打算が働いた。


 ト「もう、どっちみち、アヤカの魔法をぶっ放すんだから、君達でやって!」



 ~~~~~アヤカ視点


 案内人に指摘されながら、だいたい、あの辺かな?とか思いながら、広範囲魔法を発動し、海底目掛けて、ぶっ放す。

 水面では、その衝撃による波が襲ってくるが、船全体を我々の魔力で覆い、バリアーを張りながら、事なきを得る。

 やはり、聖武具によるチカラの強化はすばらしい。


 そして、また、新たな波がやって来たと同時に、大きなカメが浮かんできた。

 船の10倍以上はあろうかというカメだった。


 これって、討伐するとか、ムリでしょ?

 念話でトーヤに言う。


 トーヤは、主とは戦わないと言う。

 主と話してみろと・・・どうやってやるのよ!って言ってやったわよ。


 すると、エミ(エミリ)が、私が話すとか言って、カメと何やら話したみたいだった。

 カメはどうやら、眷属のカメたち(普通サイズ)の卵が乱獲される度に、ご立腹し、地震を起こしていたらしい。


 この海域では、カメは神獣であり、主の使い魔として、捕獲を禁じている。

 ましてや、卵の乱獲などもっての外であった。


 このことを王女に報告し、早速、対策を立て、警備を強化したり、密輸の取り締まりに厳しく当たることとなった。


 ~~~~~~~~~アヤカ視点終了



 そして、報告が終わった翌日の朝食の時(最近はちゃんと一人で寝てます、念のためbyトーヤ)。


 アヤカ「トーヤくん、あのさあ、今回は、トーヤくんは寝てただけでしょ?それは、勇者としてどうかなって思うんだよね」

 トーヤ「わかったよ。どこに行くんだ?」


 ア「なに?なんでわかったの?」

 ト「お前の顔と口調から、オレの優秀な頭脳が答えを導いたんだよ!で、どうするんだ?」

 ア「うふふふふ、私の婚約者を紹介しようと思うのよね。だって、エリーもトーヤに付き合ってもらったでしょ。だから、これで私はチャラにしましょうって言ってるんだけど。ってか、私がまた活躍したご褒美的なモノでしょ。だって、勇者連れてますってやりたかったのよ。やっぱ、勇者って肩書は貴重だから。それに、ウチのママが会わせろってうるさいし~~」

 ト「おまえ、オレのこと、変なふうに紹介するなよな」

 ア「わかってる、わかってる」


 こうして、オレとアヤカは、ジャポニカ王国の首都トーヨーの、商家が多く立ち並ぶ通りへやって来た。

 他の聖女とエミリは隠れながらついてきていたのは知っていた。


 そして、アヤカの実家の大きな商館にやって来た。

 どうやらアヤカは、首都トーヨーでも有力な商人のお嬢様らしい。


 番頭みたいな人「これはこれは、お嬢様、お帰りなさいませ」

 ア「ただいま、お母さんを呼んでね」


 ア「お母さん、ただいま」

 母「あらあら、おかえり。びっくりするじゃない。そちらのイケメンは?」

 ト「どうも、イケメンのトーヤと言います」

 母「まあまあ、面白い方ですね」

 ア「トーヤは、勇者よ、お母さん」


 母「うふふ、冗談でしょ。この子は、昔からジョークが好きだから、なんかごめんなさいね、ちょっと上がって待っててね」

 ア「ごめんね、なんかお母さん、早とちりして」

 ト「いいよ、いいよ」


 アヤカは、ちょっと行ってくるとか言って、多分トイレに行った。


 使用人が、お茶と茶菓子を持って来た。

 それを美味しく食べてると、その使用人が

「お味はいかがでしょう?」

 と言ってきた。


 ト「とても美味しいです。これ、手作りですか?」

 使用人「ええ、僕の恋人のシルフィーネが作ったんです」

 ト「へー、それはそれは。で、どこに惚れたんです?」


 使用人「えっ、それ訊きます?訊いちゃいます?」

 ト「もういいです」

 使用人「当店では、御遠慮無用でお願いします」

 なんだこの人?バカじゃね?


 ト「では、彼女のどこに惚れました?」

 使用人「ムネとか、ムネとかですかね?」

 ト「どんな感じのムネなんですか?」

 使用人「それ訊いちゃいます?」

 またかよ!もう、腹立つから、アヤカの分も食べちゃおうっと。


 ト「もちろん、是非、是非、聞かせてください」

 使用人「やはり、大きさと形の良さと感触と感度ですかね?」

 じゃあ、全部じゃねーか。


 ト「君は、イケメンだから、よくモテるでしょ?他にも、付き合ってる子がいるんじゃない?」

 使用人「それ訊いちゃいます?」

 またかよ!コイツ、ほんと、腹立つヤツだな。

 ト「めちゃくちゃ知りたい!!是非是非是非教えてください!」

 使用人「ハハ、仕方がない方ですね〜」

 お前がな!


 使用人「では、ちょっとだけですよ!年上の人が3人でしょ、同じ歳が5人でしょ、年下が4人てとこですかね?まあ、もっと増えるかもですけど〜」


 ト「全員、大人の関係なんですか?」

 使用人「それ」

 ト「是非是非是非是非、聞かせてください!」

 ト「仕方がないですね〜、年上は全部、同じ歳は4人、年下は3人てとこですかね、もっと増えちゃうでしょうけど〜」


 ト「絶倫ですね!何か、薬とか、ヤッテます?」

 使用人「そ」

 ト「是非是非是非」

 アヤカの母「あれー、アヤカは?せっかく、ユウト君がいるのに」


 使用人「えっ、アヤカ、居るんですか?」


 ア「どうも~~、アヤカで~~す!(こんなしゃべり方がいいんでしょ!このクソユウト!)おひさしぶりっこ、ユウト!(あっ、なんか試練の時を思い出しちゃう)」

 ユ「おおー、アヤカっ!会いたかったよ!いつからここに居たの?」

 ア「(まずは、それを訊くのね!)ついさっきよ!(殺気が出そう)」

 ユ「そ、そうなんだね。予め、言ってくれたら、なんか準備して来れたのに。でも、うれしいよ」

 ア「もう、私たち、行かないと。ごめんね、慌ただしくて」

 ユ「ううん、いいよ。久しぶりに顔が見れて、良かったよ」

 ア「うん、じゃーね!」

 ト「あっ、オレもお邪魔しました。お菓子、美味しかったです」

 母「なにもお構いできなくて、今度はゆっくりしていってくださいね」

 ト「お母さん、お元気で。そのユウト君も、またね」


 ユ「あっ、あの~~、あなたは・・・もしや・・」

 ト「アヤカさんの、単なる付き添い兼護衛の下っ端ですので、名乗るほどの者ではございません」

 ユ「あの~~、さっきの話はみんなウソですので、忘れてくださいね(小声)」

 ト「もちろん、そうだと思ってましたから。あれは、ノリでしょ、アヤカさんもノリでよく揶揄からかってくるので(小声)」

 ユ「それは大変ですね、お察しします(小声)」


 ト「それでは、ご機嫌よう」

 母「まあまあ、今度も、またぜったいに来てくださいね!」

 ト「ええ、もちろんですよ、お母さん!」


 アヤカの母は、なぜか、頬を赤く染めた。


 アヤカは、もうとっくに、店を出ていた。



 当てがわれた王城の一室へ行くと、アヤカが泣いていた。


 ソ「あっ!アヤカに何をしたんですか、トーヤ!」

 エリー「そうよ、帰ってきてから、ずっと、あんな感じだよ」

 エミリ「ご主人様、まさか、アヤカさんに・・・」

 ソ「えっ!まさか、トーヤ、どういう事です?」

 エリー「えっ?私っていう妻がいるのに!」


 ト「あの、君達?」

 前にもこんなことが・・・・。


 ア「トーヤが悪いのよ!責任を取ってよね!」(あんな話をするから!)

 ソ・エリ・エミ「!!!責任、取りなさいよね(取ってくださいねbyエミリ)!!」


 ト「はあああ~~~~~」

 オレは、ため息をつくのだった。



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