第39話 戦禍のサリュート聖教国
アヤカに付き合った翌日、オレは、アヤカと話し合っていた。
もともと男性の比率が少ないジャポニカでは、複数の女性と婚姻することが認められているが、それは全員の了承があっての事だった。なので、あのユウト君は、たいへん、とっても、女子とヤリすぎているのだった。
ただ、確証がないので、どうするかを話してたわけだが・・・・。
と、そんな時、魔道通信から急報が届いた。
サリュート聖教国が魔族に襲われ、一夜にして壊滅状態となり、聖王クリスト13世は行方不明になった、という。
転移陣が無事かどうかの調査を今しているところで、オレ達は、助けに行きたくてもいけない状態が続いた。
その日の夕方、転移陣起動は今すぐには無理だということで、急遽、我々はフランツ王国への転移陣を使い、フランツ王国からサリュートへ向かう事となった。
ジャポニカ王国から転移後、情報の確認とこれまでの報告のため、国王ピエールに謁見する。
ピ「折角こちらへ、久しぶりに帰って来たのに、申し訳ないが、明朝すぐに出立してもらう、ホントにすまないね」
ト「いえ、これも我らが使命。すぐにでも駆け付けたいと思っていますから、ご案じ頂く必要はございません」
ピ「勇者くんは、弁が立つようになったね。いやいや、成長したね、君は」
ト「有難きお言葉、身に余ります」
ピ「うん、まあ、後は、シモンに任せる」(面白くないヤツになったものだな)
シモンのじじいがしゃべっている間、オレはフランツ王国の他の面々を伺い観察していた。
ト(どうだ、アノン、わかるか?・・・・そうか・・・)
ソ(トーヤ、やはり、ピエール様から、何かしらのチカラを感じるわ)
ア(私にも、少し、見えるわ。なにか、ピエール様から魔力が漏れてる)
エリ(何だか知らないけど、私のレイティーに反応があるわ)
ト(まあ、あの事を質そうとしてもヤツがやったという決定的証拠を掴んでいる訳ではないし、例え、そうであっても無暗に動けないだろ、だから用心だけはしとこうぜ)
その日、王城の一室を提供されたが、オレは昔使っていた近衛騎士団の宿舎の一室へ向かいがてら、ルーシーの居場所を訊いた。
しかし、彼女は、急遽、アジャ村方面へ援軍に向かったとのことで、一足違いだった。
まだ、あっちの戦いが続いてるのかとそれも心配になったが、今は聖王のじじいがどうなっているかが先決だった。
この時、オレは違和感を感じていた。
なぜ、今なのだ?
すぐに、サリュート聖教国へ出兵すべきだろう?
ピエール、何を考えている?
まあ、言い訳は無数に用意できるだろうがな。
考えても正解にたどり着きそうもないので、頭をじじいのことに切り替えた。
しかし、もっと、考えていれば・・・・・・。
この夜、オレはルーシーの夢を見た。
オレは、彼女の笑顔、彼女の言葉、彼女の身体を懐かしく見つめていた。やがて、何かを彼女は言って、くるりと背を向け、オレから離れて行った。オレは、彼女の後姿をただ、見つめるだけだった。
なぜか、オレは涙を流していた。
翌日、オレは騎士団の宿舎の食堂で食事をとっていた。
すると、女性の近衛騎士の方がオレに手紙をくれた。
ルーシーからだった。
ルーシーは、自分の留守中にオレが帰って来た場合を予め想定していたようで、修練頑張ってとか、朝はちゃんと起きて朝食を食べ、夜は早めに寝て、遅くまで酒を飲まないとか、お母さんの様な諸注意が書いてあった。
そして最後に、早く結婚式を挙げて一緒に貴方の子供と暮らしたい、とあった。彼女は片親だったから、ずっと両親がいる家庭を夢見て来たのだった。
僕は、ルーシーに会いたいと強く思った。
そして、早く魔王を倒したいとも。
それからすぐ、聖女たちと合流し、サリュートへ派遣される兵たちと一緒に出発した。
その道中のこと。
以前のように、昼食休憩後の時間を利用して、エリーと剣の手合わせをしていた。
エリー「トーヤ、ちょっといいかな?サーヤのことだけど」
ト「ああ、約束だったな」
エリー「私、貴族のマナーとか、ちゃんと知らなかったから、ああいうのは上級コースなんだろうなとか、あの時は思っていたわけなんだけど。だって、サーヤは、貴族の奥さんになるって頑張ってたから、つまり、トーヤの奥さんになるって事だよね。トーヤは勇者だから、貴族としてこれからは暮らすって、サーヤは言われたみたいでね。でね、この前、マウストゥマウスは、マナー違反ってアヤカが言ってたんで、えっと思っちゃったんだ」
ト「なんか、まわりくどいな。だから、どんなキスだったんだ?」
エリー「だから、そのマウストゥマウスだよ。でもね、彼女、ホントは嫌がってたんだよ。でも、トーヤのためって我慢して、だから、それされた後、唇を水でゴシゴシ擦って洗ってた。ねぇ、彼女、
ト「それは、でも、唇同士を重ねただけだよな。大人キスではないよね」
エリー「そう、ちょっと触れる感じだったよ、その微妙に触れるってのが上級コースなんだなって。フランツ王国は、貴族のマナーが厳しいのでいろいろあるんだなって、思ったんだけど」
ト「ああ、そういうこと。貴族でも、階級によってマナーも違うって事か・・・」
そんなマナー、クソ食らえだ。
サーヤは、騙されてた可能性が高い。
しかし、あの時見た大人キスは?あの笑顔は?
ますますわからん。
サーヤと会いたい。
本音が聞きたい。
今なら、冷静になれる、ハズだ。
しかし、ピエールは、サーヤを騙して、何をしたかったんだ。
それと、聖女たちとオレを反目させて・・・さらに、聖女たちを魅了させるような事をして、何がしたい?
聖女たちを自分のモノにしたいってのはわかる。
でも、勇者パーティーをぶち壊して、何を得する?
サーヤには・・・サーヤとオレとを別れさせようと企んだのか?
それは・・・なんだ?・・・オレへの嫌がらせか?・・・アイツに何の得が・・・剣聖を手に入れるため?・・・アイツ、もしそうなら、許さねーぞ!!
聖王から貰った指輪の効果で、なんとかピエールの影響を受ける事は無かったが、アイツの考えが分からん以上、これ以上考えてもどうしようもないか。
ただ、アイツはサーヤを含めて、彼女たち全員を自分のモノにしようとしている可能性が高いってことはわかったぜ。
オレたちは、時々連携の練習もしながら、エミリにはそんなオレ達のサポートをしてもらいながら、サリュートの土を踏んだ。
そこには廃墟となった、聖王宮があり、街があった。
まだ、煙が
避難民とか、手負いの兵士や聖騎士達が居た。
我々は、情報を整理しながら、敵の情勢を探った。
ここ2、3日は、目立った戦闘はないとのことだった。
魔王領との境界の砦に行くと、そこは地獄だった。
砦内では、
我々は、索敵を行いつつ、生存者を探した。
そうして、小一時間が立った時、巨大な魔法陣が出現し、死者が蘇った。
ゾンビとして、蘇ったのだった。
寝転んでいた屍全部、敵も味方も全部だから、とてつもない数だ。
うえっ、やばい、気持ちが悪い・・・っとか、言ってられないけど、コイツ等、どうするんだよ!
あちこちで悲鳴が上がった。
聖女たちも、ここへ来てから顔が青ざめていたが、ゾンビを見て、さらに青くなったり白くなったり、早く逃げようと訴えて来た。
えっ?逃げるの?
オレ、逃げてもいいのかな、勇者だけど・・・・。
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