のんびりラブコメディー

いっくん

第1話:手袋

「おぉ~、氷貼ってる」


 確か、テレビで今日の気温はガクッと下がるって言ってたっけ。

 今日で2学期最後だからあと1日だけ待ってほしかったなー。


 なんて気温に悪態をつきながら上着ポケットに手を突っ込む。


 

「おはよっ、ゆうや!」

 振り返ると付き合って1ヶ月の彼女ふうかが小走りして来た。


「おう、おはよ…ってなんで右手だけ手袋してるの?」

「あー、あはは。昨日、左手なくしちゃった」


 ふうかはそう言って、冷たそうに左手を擦る。


 んー、女子は男子みたいにポケットに手を突っ込むのは躊躇うのだろうか?

 でも今日からもっと寒くなるだろうし、手袋あった方がいいよな。



「ふうかさ、明日って空いてる?」

「え?空いてるけど…」

 ふうかは不思議そうな顔をしながら答える。



「じゃぁ買いにいこうか」


「え?何を?」


 伝わってくれ…。


「だから、新しいやつを」


「あっ……、え、ほんと?でもいいの?」

「まぁちょうどクリスマスだし」

「嬉しい!ありがと!!あ、でも…」


「ん?」




「やっぱり、新しいのなくても大丈夫かも」




 そう言って、ふうかは僕のポケットにその冷え切った左手を突っ込んできた。

 

「冷たっ!?」

 

 あまりの冷たさに思わず彼女の方を見ると、12月とは思えないくらい顔が真っ赤に上気していた。

 

 そして、彼女がポツッと一言。





            第1話「あったかいよ」

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