音杏とデート編
第15話 桐ヶ谷音杏はデートに誘う
今は放課後。私は
特に今日は大きな問題はなかった。強いて言うなら
一ノ瀬は私に「気にするな」って言ったけど、実際一ノ瀬はどう思ってるのかな? やっぱり面倒くさいって思ってるのかな? そうだろうけど。
じゃあ、やめてくれって言ったらよくない? 別にほとんど初対面の私に気を遣う必要なんてないし、そもそも気を遣いそうなキャラじゃないし。やっぱり一ノ瀬ってわからない。
その一ノ瀬も普段通り、と言っても普段をあまり知らないけど、授業受けて、休み時間を過ごして、お昼を食べていた。普段通りと言うことはすなわち一人でってこと。
あれで楽しいのかな? そりゃぁ私だって一人になりたいときとかあるけど、あそこまで
あの視線を感じながら普通に読書できるとか普通に尊敬なんですけど。絶対話声とか、視線とかわかっているのに完全無視だもんね。どうしてあんなに一人が好きなのかな? 理由とかって聞いちゃ・・・・・・だめだよね。
って言うか絶対に教えてくれないし。どうせ「お前に言ってもしょうがない」とか言うんだよね。あの人を
まぁ、サバサバしてるおかげで他の人に
そんなことを考えながら私は部活をし、部活はいつも通りに終わって片付けに入った。
「
「莉音、からかいすぎ」
「ごめん、ごめん。面白くてつい」
「誰のせいだと思ってるの? って言っても莉音は私のために提案してくれたんだもんね。ありがと」
「ま~、私も面倒だな~って思ってたし。音杏のことならいつでも相談に乗るよ」
「ありがと」
見た目に似合わず
やっぱり友達がいると相談事とかできていいよね。他にも頼りがいのある先輩とかがいれば・・・・・・い、いったん置いておいて。悩み事が共有できるってすごいことだと思う。
一ノ瀬って悩み事とかあったらどうするのかな? そもそも宿題とかでわからないことがあったら誰に聞くの? 親? それとも兄弟? って、一ノ瀬って兄弟いるの?
もしかしてネットにたくさん友達いるとか? よくある「萌え~」ってやつ・・・・・・って一ノ瀬に
「ねーねー、音杏。聞いてる?」
「え、あ、うん。もちろん」
「ほんと~?」
「ほんと、ほんと。聞いてないよ」
「聞いてないんかい!」
莉音が小さな手で私をポンポン叩いてくる。手加減しているのか、子供がおじいちゃんにする肩たたきみたいなイメージになっている。それはそれで背も
「ごめん、ごめん。っで、何の話だっけ?」
「だからー、みんな疑ってるんだよ。音杏と
「まぁ、そうなるよね」
「そこで! 恋人らしいことをしようってわけ」
「恋人らしいことって?」
「二人で帰ったり、一緒にお昼食べたり、デートしたり」
「そ、そんなことしないよ!」
どうして恋人のふりなのにそんなこともしないといけないわけ? 第一一ノ瀬がそんなことするわけないじゃん。
「別に恋人同士なら普通だよ。音杏だってあんまり
「め、免疫くらいあるよ」
「そんなこと言って男子と二人っきりで遊んだことなんてあんまりないでしょ。付き合った経験もほとんどないんだから」
「それは・・・・・・」
ぐうの
付き合ったことがないのはもちろんわざと。だって面倒なことになるのが嫌だから。でも、言われてみればこの
付き合っているふりをしているんだからデートくらい普通だよね。他の人に信じてもらえるようにするにも恋人らしいことをしないと。
「ちょうど、今度の土日は部活もオフだし、どっか行ってきたら?」
「早くない?」
「
「だから、これって善なのかな・・・・・・」
昨日からこの言葉をよく聞いている気がする。ただやっぱり自分のやっていることが善なのかどうか疑わしくなってくる。
――もっと自分の意志を強く持て。
今日の一ノ瀬の言葉がフラッシュバックしてくる。どうしてこんなときに一ノ瀬が出てくるの? 関係してるから? それとも意外すぎて印象に残ってるから? どちらにしても一ノ瀬の言う通りだ。迷っても始まらない。
どうせ三ヶ月しか付き合わないんだから少々急いだところで
「って、私一ノ瀬の番号知らないんだけど」
「え~! 何してるの?」
「いや、だって、
「はぁ・・・・・・早めに聞いた方がいいよ」
「うん」
――ブー。
PINEの着信だ。タイミングよく一ノ瀬が・・・・・・なんてことは絶対にない。どうして聞くの忘れたかな? 色々ありすぎて聞くタイミングを失ったってことにしておこ。
PINEのメッセージは
――お疲れー。カズは自分から番号送らないと思うから、電話番号とPINEのID送るね。カズにも音杏ちゃんの番号とID送っておくね。カズの返信は時と場合によって遅かったり早かったりするから気長にー。私に返信は絶対に来ないんだけどね。
その文章の後に一ノ瀬のものらしき番号とIDが送られてきた。どうして、ということはこの
――ありがとうございます。
過程はどうあれ、とりあえず一ノ瀬の番号を手に入れることに成功した。だけど、さっきから莉音が私の画面を
「カズって誰~?」
「えっと・・・・・・と、友達かな?」
「『かな』って言われてもわかんないよ」
「あ、うん、そうだね」
言っていいのかな? 一ノ瀬と寧々先輩が知り合いっぽくて、その上もしかしたら寧々先輩は一ノ瀬のことが好きなんて言っていいのかな・・・・・・
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