第21話まあばあちゃんの心配

まあばあちゃんはあれからお春ちゃんの事が心配でなりません。だからお春ちゃんの家の前をゆっくりゆっくり通ります。


ひょっとしたらこの間の娘さんがお春ちゃんの事を教えてくれるのではと思ったのです。


「お春ちゃん。早く良くなるといいのにね」


まあばあちゃんはジロにそっと言いました。


「年をとると自分でも分からない間にあっちこっち悪くなって嫌よね。ジロ」


まあばあちゃんもこのところ体の調子がよくありません。足や腰が痛くて痛くて、寒さのせいでしょうか。


春は三寒四温といって冷たい日と暖かい日が変わるがわる訪れて、まあばあちゃんの体を痛めつけます。


「この季節、今は辛いけどしばらくすると暖かい春になるね。もうちょっとの辛抱ね。そうしたら、お春ちゃんも病院から帰って来るわね」


見上げると、白梅や紅梅が家々の塀から顔を覗かせています。桜の咲く春はもうそこまで来ています。


まあばあちゃんの「早くよくなって」と思う願いはきっとお春ちゃんに届くはず。ジロも一緒にお花を見上げていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る