第15話 30過ぎたら魅力はない

 30過ぎたら魅力はないって思ってた。

「その言い方だと、あるつもりなんだ。おじさん」

 あるよ。バリバリあるよ。

「というか、30過ぎたら、なんで魅力なくなると思ったわけ?」 


 うーん。あのね。アニメやゲーム…映画とかの創作の中で…30過ぎの女性のことをおばさんと言って、笑うギャグシーンがあるんだ…。若い時は自分も笑っていたけど。いざ自分がその年齢になって、あの場面を思い出すと、若者から年齢について馬鹿にされるのかと思うと落ち込むんだ。悲しくなる。若い時、自分たちは笑っていたのにね。

「さっきは、30過ぎても魅力があるって言ってたじゃん」

 うん。わかったんだ。魅力ある人は年齢なんて関係ないって。むしろ、魅力がない人は若くても魅力がないっていうことに気づいたんだ。

「おじさん、結構ひっどいこと言ってるよ」

 でもさ、ふと思ったんだ。魅力があるとか魅力がないって、誰かの主観でしかないんだよね。それって誰が決めているんだろうって。

「誰だったの?」

 世間ってやつかなぁ…。世間体って大事だけどさ…。なんというか、だからといって自分の本当の気持ちを、ないがしろにしてはいけないと思う。

「ふーん。おじさんの本当の気持ちって?」

 30過ぎても、私って良い感じじゃんっていう気持ち。

「それって…勘違いおじさんじゃないの?」

 うん。確かにそうかもしれないけど。勘違いでもさ、そう思うことって悪いこと?

「……う~…たしかに。誰にも迷惑かけてないなら、しょーじき、あたし…どうでもいいかも」

 でしょ?結局、他人事だからさ。皆、おじさんが30過ぎてもイケてるなーなんて思っていても、どうでもいいわけ。

「でもさ、もし若い子から痛いよ。もうおじさんなんだから(笑)って言われたらどーする?」

 そんな扱いされたら、傷つくけど。

 でも。お前も、いつかおじさん、おばさんになるんだよって今なら、言えるかな…。

 君がおじさん、おばさんになった時に、いまの言葉を思い出して、若者を見て惨めな気分を味わえ。そういう老いを馬鹿にする価値感だと…どうやったっていつかは老いるし、若さには勝てないんだから。

「言われたときは、なーに言ってるんだと思うけど、時限性でじわっと効く毒みたいな言葉だね」

 まー、実際怖くて言えないだろうけどね。チキンだからね。おじさん。


「それで?おじさんは、何をもって魅力があるって言うつもりなの?」

 そこなんだけど、魅力のある30代ってどういうことをいうんだろうかって考えたの。

「うん。ずずっ…カフェオレおいしい」


 つまり、かっこいい30代とは!若者を導く存在だよ!いつの時代も師匠キャラはかっこいいよね!

「なるほど。だから、こういう話を書いたの?」

 そうそう。おじさんが教えられることってなんだろうって思ったら、社会の不条理ぐらいしか教えられないけど。少なくとも、おじさんと似てる若い人には刺さるかなって。

 傷ついてるのはお前だけじゃないとか、努力が足りないとか、頑張れとか、お前が悪いんだとかね、どうでもいい。

 正しくあっても、正しくなくても不条理は降りかかる。それを知っておけっと伝えたいだけ。

「伝えるだけ?」

 知ってるのと、知らないとじゃあ、やっぱショックの度合いが違うからね。

 傷つくけど、これがニートおじさんが言っていた社会の不条理かーて思えること大事よ。

「ふーん…ずすッ…」


(閑話)


 話が変わるけど。

 前の話でさ。今頃なら結婚して、子供がいて、そろそろマイホームって感じだと思っていたって言ったけどさ。

 待て待て。私の望みってそうなの?って考えなおしたの。

 だって、それが望みなら、小説なんて書いてる場合じゃない!安定した職について、婚活サイトに登録したほうが良いんじゃないかって思ったんだ。

 でも、どうにも腰が重くてね。そこで、ふと…それってただただ世間体を気にしてるんじゃないかって思ったんだ。世間的にはそれが幸せで、勝ち組って認識だから。私も勝ち組になりたい。だから、それが私の幸せの形って思い込んでいたんだ。

 兄ちゃんを見てると、確かに幸せそうで、その形を否定するつもりはない。

 だけど、私の心が望んでいることは違うって思ったんだ。

 いま、何をしたいって考えたら自然とキーボードを叩いていたんだ。

「おじさん、いま幸せ?」

 それがさ…不思議と幸せなんだよね…世間的には完全に負け組なのにね。

「だったら、勝ち組じゃん」 

 そっかぁ…そうだよね…いまのうちに、この幸せを噛み締めとこ…。


(閑話)


「あたし…大人になろうかな‥‥そうだなー45才ぐらいの」

 45才のロリちゃんって、それもうアイデンティティがなくない?

「ふん。あたし、自信があるの」

 な、なんの?

「45になっても可愛いし、かっこいいって」

 あ…。

 そうだね。きっとそうだ。

 ロリちゃんって、なんというか…かっこいいねぇ…ヒーローみたいだ。

 うん。君は私が考えた最強のヒロインだから、45才になったら、もっと素敵になるよ。

「当たり前よ」

 強気に笑うロリちゃんに、私も笑った。

 

 

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