第13話 板挟み問題~社会とは不条理であーる~

 じゃーん!ロリちゃんに問題です。

「えぇ…いきなりウザい」

 ロリちゃんはAさんとBさんと知り合いです。

 ロリちゃんがいない時にAさんとBさんが喧嘩しました。

 AさんはBさんが悪いと言います。

 BさんはAさんが悪いと言います。

 どちらも、ロリちゃんにその話を、こっそり耳打ちしてきます。

 さて、ロリちゃんはどっちの味方をする?

「なにその問題?」

 おじさんが作った問題だよ。

「変な問題~。喧嘩の内容は?」

 この問題の本質はそこではないのだよ。ロリちゃん。

 さぁ、どっちの味方をする?

「ううん…どっちの味方をするって…喧嘩の内容もわからないのに…じゃあ…仲が良い方の味方する」

 うん。実に10才の小学生らしい回答で、おじさん嬉しいよ。

「むー…この問題の答えは?」

 答えはないよ。

「は…?」

 この問題に答えはないよ。

「はぁ?なんで答えのない問題出すの?」

 このシチュエーションはね、生きてたら、必ずあるシチュエーションだよ。喧嘩の内容がないのはね…その人の主観でしか語られない内容は信用できないからだ。たとえ、仲の良い友達であってもね。だって、人間は嘘や誤魔化しをするからね。

「嫌なこと言うわね…そんなんじゃ、基本的に人間を信用してないじゃない」

 信用してないが?

「うわー…」

 それでは、この問題の回答例を公表するよ。

「回答例あるんだ…どーせおじさんの経験でしょ?」

 えー、それでは60代主婦の回答例を言います。

「誰!?60代主婦って誰!?」

 おじさんのお母さん。

「おかあさんっ…!割とそこは最終手段だよね…!人脈少な…!」

 60代主婦の回答は

 Aさんには、Bさんが悪いと同意して。

 Bさんには、Aさんが悪いと同意する。

 つまり、皆に良い顔をする八方美人だね。

「それ一番、やっちゃいけなくない?AさんとBさんにハブられるよ」

 お母さん曰く、ハブられても問題ないとのことだった。

「つ、つよ~~~~」

 これはメンタル強者にしか許されない回答例だね。

「待ってよ。それ実際やって、ハブられたの?」

 うん。微妙な空気になったって言ってった。だけど、お母さんは気にしなかった。その結果、もう二度とAさんとBさんからそういう話をされることはなくなったそうだ。

「あーなるほどね…ある意味賢いけど…防御力がいるな」


 それでは、次の回答例は…30代サラリーマン男性です。

「だ、誰?」

 おじさんの兄ちゃん

「おじさんのお兄ちゃん!?いたんだ!?仲良いね!?ニート弟のどーでもいい問題、答えてくれたんだ!?」

 うん。兄ちゃんは、昔から優しいからね。ちなみに、結婚して子供もいるし、近々マイホームも購入する。

「人生勝ち組じゃん…同じ兄弟なのにどうしてこうなった」

 それでは、社会を上手く泳いでる兄ちゃんの回答は、こうでした。

 どうでもいいことだったら、どちらの味方もしない。

 もし、喧嘩を解消する必要性があるならば、3人で話し合う場を設けて、2人の話をすり合わせて落としどころをつけるとのことだった。

「すごく…大人な回答だね…」

 私と兄ちゃんは2才しか離れてないよ。

「えぇ…」

 この問題には答えはないけど、兄ちゃんの回答はベストだと思う。

 どちらの味方もしない…。つまりは傍観者をするのは悪いことじゃない。

「そうなのー?」

 うん。こっそり自分にだけ打ち明けてくる心理は何だと思う?ロリちゃん?

「そりゃー向こうが悪いって言ってほしいんでしょ」

 その通り!つまり味方に、ついてほしいわけ。

 でも、味方をする気がない…そもそも関わる気がないってわかると、AさんとBさんは見切りをつけて、ほかに味方になってくれそうな人にまた、相手が悪いと話すわけ。


 で、もうひとつの3人で話し合って、落としどころをつけるって話。

 これは公平に判断する第三者がいれば上手くいくと思うよ…だってこれ、もうプチ裁判みたいなもんだからね。ただ、裁判官役はかなりの公平な精神がないと火に油で炎上する可能性もあるから、大変だよね。

「会ったこないけど、おじさんのお兄ちゃんなら大丈夫そうな気がする…」

 ふふ…それでは、最後にニートおじさんの回答例を出すね。

「はいはい」

 ニートおじさんは主人公属性に憧れて、痺れていたからね。

 真実を究明して、解決しようと動いたんだ。

 そう…見た目は子供、頭脳は大人の探偵並みにね。


 私はAさんの話を詳しく聞き、同様にBさんの話も詳しく聞き、おじさんの中で話をすり合わせて、どちらの方がより悪いかを考え、判断して、片方に謝るように求めた…。話をわかりやすくするために、Bさんの方が悪いとおじさんは判断したってことにするね。

「うん…なんかさっきのお兄ちゃんの回答と似てる気がするけど…それでどうなったの?」

 Bさんにお前が悪いんだから、Aさんに謝ったほうがいいとアドバイスしたんだ。

 すると、Bさんは大激怒。Aさんが如何に悪いかということを話した。それを聞いた、おじさんはなんだかAさんの方が悪い気がしてきた…。だから今度はAさんに事実を確認したわけ。

「なんか状況が悪化してない…?」

 すると、Aさんも負けずと新事実を付け加えて、Bさんが悪いという話をした。2人の話してる様子から、どちらも本当のことを言ってるように感じる。結局、おじさんはAさんとBさんの間をおろおろとして、3人の中は微妙になりましたとさ。ちゃんちゃん。

「えぇ…」

 この問題に答えはないけど、おじさんの回答例はダメな方に入ると思う。

「うん…ま、わかる…」

 結論としては、他人の喧嘩は、自分に実害が来ない限り、傍観にかぎるって話だね。

「でもさー…必ずどっちかが悪いんじゃないの?Aさんか、Bさんかのどちらかが嘘ついてるんじゃないの?」

 ロリちゃん、良い質問をするね。

 喧嘩してる最中のカメラ映像、ボイスレコーダーとか物理的な証拠があれば、判断できるけど。実際、そういうのは、ほとんどなくて、本人たちの証言しかないわけ。さっきも言ったけど、こっそり自分にだけ伝えてくる心理は味方になってほしいから。第三者を味方につけるためには、ロリちゃんどうする?

「えー…どうするって…どういうこと…?」

 自分にとって不利な話はしないってことだよ。相手が悪いという事実だけを言う。

「そんなの、ダメでしょ!ちゃんと本当のこと言わなきゃ」

 それはそうなんだけど、実際そうするんだよ。人間。

 もちろん、ロリちゃんみたいに正直者もいるわけだけど。少しでも自分に落ち度があると認めれば、相手はそこを責め立ててくるんだよ。だから、聞かれない限りは自分が不利になることは言わない。さらにややこしいのが、嘘を言う人もいる。でも、それを嘘だと証明するのは、なかなかしんどい。

「嘘をつく…」

 でも、嘘はつかない方がいいよ。結局はどこかでばれるし、誰からも信用されなくなるからね。

「まー…物語では、だいたい痛い目に合うよね」

 で、どっちの話が正しいか?なんて、映像やボイスなどの証拠がない限り、私たちには、もうわからないんだよ。どっちも嘘をついてるかもしれないし、どっちも正しいのかもしれない。

 だから、ロリちゃんが言ったように、好きな方の味方につくのもありだし。お母さんみたいに八方美人で適当に話を合わせてもよし。兄ちゃんみたいに傍観者を決め込むか、プチ裁判を開いて、折り合いがつくように仲裁するのもあり。私みたいに混ぜ返して、壊すのも良しということさ。

「…道徳の授業みたいね」

 道徳の授業より、キレてるでしょ?

 ただこれだけは覚えておいて。今回の問題は、自分が第三者の立場でどう振舞うかという話だったけど。社会に出たら、自分がAさんやBさんの立場になることがある。むしろ、そっちの方が多いかも。

 第三者の立ち振る舞い、会社の上司としての理想は、やっぱ兄ちゃんのプチ裁判なんだけどね。でも、これは技量がいる。それ以外のやり方を上司がやったら、もう最悪だからね。でもね…ロリちゃん…事実はどうであれ、好きな方の味方をする会社の上司って、多いからね…ふふ。

「……社会って魔窟なの?」

 不条理なんだよ。

 じゃあ、今日はこのへんで…おやつ食べよう。今日はおじさんが作ったふわふわのシフォンケーキだよ

「えぇ…また、おじさんの手作り…もっ…ほどよい甘さとふわふわ感、おいしいし…」

 ふふ…ありがとう。ロリちゃん。

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