DREAM DIVER

坂田クロキ

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 時はC.E.2139年……今よりは科学が発達し、でも人間は今とさほど変わらぬ生活を送っている時代。


 一つの奇病が流行る。“夢迷い病”――通称『Dream Lost Syndrome(ドリーム・ロスト・シンドローム)』と呼ばれる奇怪な病気。


 この病は、夢と現実の境がひどく曖昧になり、夢の世界を現実世界と思い込んで眠ったまま目覚めなくなる病気である。すぐに命に関わるような病気ではないが、発症から罹患期間が長期に及ぶと、やがて肉体が衰え、滅んでしまう。


 この奇病に対抗する唯一の手段は、直接患者の夢に入り込み、夢を“夢である”と認識させ、現実世界へと連れて戻ること。


 そのための装置が開発され、特別に訓練を受けた資格のある者たちだけがそれを用いて“夢戻し水先案内人”としての役割を引き受ける。


 彼らは夢迷い病(DLS)の患者の夢の世界へまるで、ダイビングをするように“潜り”、その無意識下の深層意識から患者の意識を浮上(目覚め)させることから『夢潜入捜査官―Dream Diver(ドリーム・ダイバー)―』、略称“WD(ダブルディー)”と呼ばれている。


 ここは日本の首都に唯一置かれている政府直轄のDLS治療室日本支部。ここでもダイバーたちは昼夜を問わず患者の無意識下の意識という名の夢の世界を懸命に潜り、泳ぎ続けていた……。ただひたすらに、己の“境界線(ボーダー)”を信じてーー……。




 これは科学が進んで、人が想像したものは大抵実現できるようになる時代の少し前の、彼らの物語ーー……。


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