第19話
【無智 亦無得】
つまりだ この世界のすべてを解き明かしてさとろうとしたり 逆に この世界のあれこれを求めたりという欲望が天敵なのさ 『映像』のなかのものをほしいという倒錯が『苦しい』という『映像』につながる この世界をうめつくす『苦しみ』さえもが『膜』にうつされた『物語』だと気付くことだよ 苦しみは『この色はよい この色はわるい』という差別からうまれて 差別は欲望からうまれるんだ この欲望ってやつを おれは『煩悩』ともよぶ いやいや 緊張しなくていい 煩悩は一〇八個あるんだが すべての煩悩を消しされなければ 成仏できないなんてことはない 『煩悩即菩提』っちゅうくらいで 『煩悩そのものがさとり』でもあるのさ ちょっと ややこしいかもしれないが そもそも おれは『差別はいけない』といっているんだから 『差別の原因である煩悩も差別してはいけない』ことになるのさ だいじょうぶ おれのおしえでは 『森羅万象のすべてが最終的に仏様になる』ということになる 信じるものしかすくわれないなんてことはねえ 親鸞もいっている 『善人でさえ極楽浄土へゆけるのだから 悪人が極楽浄土へゆけないわけがない』ってね 善人は煩悩がないから成仏して当然だとおもっているが 悪人は煩悩があるから成仏するために心底すくわれたいとおもう だから仏様は悪人こそをすくおうとおもう 煩悩をなくそうという煩悩だって また おなじく煩悩なのさ
――つづく
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