第17話

『ありのままに』ちゅうのは本当に大事なことだから ここではなしておこう かつて ひとりの母親がおれに相談しにきた 『子供が死んだから蘇らせてくれ』ってな おれはこういった 『ならば いままでひとりも死人のでたことのない家をさがしなさい そこならば 人間を蘇らせるくすりもあるだろう』ってね くだんの母親は必死になって『ひとりも死人のでたことのない家』をさがしたが むろん そんな家は存在しない そこで母親はさとったのさ 『人間はかならず死ぬ』ってね ばかにしちゃいけない このおれも二十九歳でバラモン教に出家するまでは『人間はかならず死ぬ』ってことも識らなかった このはなしにはつづきがあるんだ くだんの母親がそんなこんなでどうおもったかっていうと 『死んだ子供をありのままに愛すること』だったのさ 


――つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る