第12話
【乃至 無老死 亦無老死尽】
『色』は『膜』というスクリーンがうつす『擬似映像』にすぎねえ といってもだ その『世界』ちゅう『映像』のなかのおれたちそのものが『映像』にすぎねえ 『擬似映像』を体験してるってことはおおもととなる『膜』があるっていう証拠だし 『膜』というスクリーンがなければ『擬似映像』をかんじることもできねえ 老いや死っちゅう苦しみのおおもとが『空』という膜だとおもえば 『膜』というスクリーンが永遠にひろがっているだけ あるいは 『フィルム』のなかに過去も現在も未来もごちゃまぜになっているだけだから 無いことになるけれども 『色』という映像としてのおれたちは 同時に老いてゆき死ぬ運命にあることはたしかなんだ 『さとる』と『さとらない』を差別しないように 『映像』と『膜』を差別する必要もないから 『生』と『死』を差別することもないわけさ
――つづく
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