第5話 オーガとエルフの村#1
(エルフのアルス)
俺たちエルフは森に棲む
森の恵みに生かされ、森の魔物に怯える
今日も生活のために森へ狩りをする
ここのところに獲物がちっとも見つからねぇ。
危険だが少し奥の方にまで足を伸ばすか、
ここは油断がならねぇが、
俺にもしもの事があったら、イリアは悲しんでくれるだろうか
ーーーーーーーーーーーーー
私は楽観視していた、この異世界を
生まれてすぐにドラゴンに育てられた偶然のせいで、なんとかなるだろうと考える癖ができていたのかもしれない。
「こんにちは~みなさん…私はオーガのゲンキといいますよ~決して乱暴なことはしませんよ~…」
私とアルスは、出会いから一晩明けて直ぐに
アルスの住む村に向かった。
太陽が最も高くなる頃に到着するなり
アルスと同じエルフたちに
弓を持って囲まれた。
私は両手を挙げながら無害アピールを繰り返す。
「すみませーん!誤解があるようなよで弁明させてくださーい!決して悪意はありませんから!お願いだから武器を納めてくださーい!アルスくーん!君からも何とか言ってやって!」
「おっ!おう!分かった!みんなぁーー」
「アルス!貴様村にこんな奴を呼び込んでどういうつもりだぁ!」
「狩りも満足に出来ず!魔物を連れてくるとは!」
アルスの奴は話も途中に怒鳴られている。
村での評価もさほど高くないのかな…
弓を構えたエルフが四人…今にも矢を放ちそうな状態で私を囲んでいる。
刺激せずに大人しくしていよう。
「いま長に報告をしている!貴様ら動くなよ!いかにオーガといえど我々の弓を受ければタダではすまんぞ!!」
「あっ…!はーい、大人しくしてまーす」
弓を構えるエルフはみな興奮している、
キリキリと弓をいっぱいに引いているから、つい放しちゃった、みないな事になったら最悪だよ、絶対抵抗しない…
それにしてもエルフの村が向こうの方に見える…思っていたより、ずーっと田舎だ…
前世の田舎のばぁちゃん家でもめっちゃくちゃ発展していると思えるくらい
エルフの村は貧弱だ。
森の奥の少し開けたところにエルフの村はあった。村の入口を示しているであろう、少し大きめの石が2つあるところに私たちはいる。
そこから木と土と葉っぱで出来た小さな家が30軒ほど見える。おそらく木を組んで建物の基礎を作ったのだろう。
地味な色の土壁の隙間から所々木が見える。
飾りっけのない箱の上に乾燥した葉を並べて屋根にしている。
高さは1mちょっとほどしかない、恐らく家のなかは少し地面を掘ってあるのだろう。
他のエルフの身長もアルスと同じくらいだが、
それでも高さじゃあまっすぐ立って歩けないものな…
私が村の様子を遠目から観察していると
こちらに向かってくる一人のエルフが見えた。
長髪、色白、他の連中と同じくイケメン…
他と比べて少し立派な毛皮のマントをしている。
そのエルフがドシドシと足音をたてながら私たちの近くまできて、よく通る声で話しかける。
「そいつがアルスの連れてきたオーガであるか!」
「あっ!はーい、どうもオーガのゲンキと申します、よろしくお願いいたします。」
「オーガなんぞに声をかけておらん!!黙れ!!アルス答えよ!」
オーガなんぞにって…アルスもそうだったけど第一印象毎回最悪だな、せっかくエルフについてはいいイメージ持っていたのに、好感度下がりまくりだわ。
「あっはい、長。そうです、こいつは俺が連れてきました。」
おお…アルスがしおらしくしている。
いつも口悪いアルスでも長の前ではこんなのなんだな…
「まったく、どういう事だ!?オーガを殺すでも、捕らえるでもなくただ村に連れてくるとは!しかもそのオーガが飄々と話しかけてくる、いったい何が目的なのだ!」
これ以上悪印象を与えないように、私は営業スマイルで返す
「ああ、それはですね~私の方から説明いたしますと~」
「オーガなんぞと口を聞いておらん!!アルス!!集会所にて皆に弁明をせよ!このオーガはそれまで牢屋に閉じ込めておけ!!おい!お前ら二人で連れていけ!逃げようとしたら構わず殺せ!分かったな!」
「はい!」「はい!」
アルスは小さくなりながら、長と名乗った失礼なエルフと村の方に行ってしまった。
私はというと村の外れに連行された。
そこには直径と、深さが2mくらいの穴が地面に空いており
その上に木で出来た格子が置いてある。
地面に掘った牢屋のようである。
「さぁ!入るんだ!」
痛っ、一人のエルフが矢の先端を私の背中に
ツンツンとしながら指示する。
そんな乱暴に指示しなくとも、言うこときいているのに本当にエルフに対する心象は今ストップ安状態である。
賢くて、かっこいいイメージを返せよ!
心のなかで少し反論しながら穴に入ると、木の格子をされ、石で重りをつけられたようだ。
ふたりはその石の上にそのまま座り見張りをするようだ。
よかった、これで一安心だ。
正直矢を突きつけられてる間は怖かったが、こんな風に土の中に入れられたなら、いざとなれば土魔法で穴を掘って逃げることが可能になった。
地面じゃなくて鉄で出来た檻とかだったらどうしようかと考えていたが、彼らにはそれだけの文明が無いようにみえる。
鉄のナイフや短刀は持ったいるようだが、高級品なのか、ほとんどの弓の矢じりは石製だ。
さてと、今慌てて脱獄してもいいけども、
それだとアルスが攻められるし、今すぐ殺されるとかでもないようだから、一先ず休もうかな…
しかし、エルフの長め、目的はなんだ!?だとさ…私の目的なんかそんな大それたものではない。
この異世界で最低限文化的に生活する。
そんな程度だが、この世界、オーガではそれすら難しいのか…
しばらく横になっていると
何やら外で話し声が聞こえてくる、
女性の声が聞こえる…
見張りのエルフがその女性に声をかける、
「イリア様!オーガなんぞにそんなものは必要ありません!」
「そうです!それにもしもイリア様に何かあっては困ります!」
「心配いりません、もしもの時のためにあなたたちがいるのでしょう?それに話を聞く限りいきなり襲われるということもなさそうよ。」
女性ははきはきとした声で見張りたちに返す。
「しかしーー」
見張りが言い返すのも聞かず女性は
暗い穴の中にいる私に声をかける。
「オーガさ~ん、お話聞かせてくれませんか~よければ食事なんかもありますよ~」
綺麗な女性エルフがにこやかに声をかけてきた。
私の中のエルフ株がやや上昇した瞬間であり、異世界で始めてドキッと心がときめいた瞬間である。
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