第48話 尊敬と邂逅
テオの力を貯めた右拳が壁に
(これが我が領主殿の御力か)
己の肉体ではなくなったかのような錯覚を覚えるほど、身体は羽のように軽く、そして鉄をも容易に砕く
これは【覚者――闘将】の能力【剛力】によるのではないかと思われる。
この【剛力】は身体能力を著しく上昇させ、別次元の存在に生まれ変わらせる。おまけに動体視力が極限まで上昇したせいか、怪物達の動作が止まって見えるのだ。まさに、接近戦を主体とするテオにとってこれほど相性が良い能力もない。この力により、遭遇した怪物を問答無用に屠っている。
多分、この怪物の中には元は同胞達がいるのだろう。持ち主の魂は怪物化した後でも捕らわれの身。それは、ザップとブルの件からも明らかだ。だからこそ、一人でも多くテオ達の手で解放してやらねばならない。
「っ‼」
テオの背後から襲いかかってくる十数匹にも及ぶ怪物の気配。
振り返りざまに右拳を振り抜こうとするが、カロジェロの前面から砲弾のごとく放たれた無数の光の帯が、怪物の頭部を穿ち、爆砕させる。
「すまん。助かった」
飛距離のある武器に対する様々な強化。それがカロジェロの能力――【必中法具】。
今も愛用にしている銃に特殊効果を付与させている。さっき化け物共を
「こんな時に何だが、グレイ様ってホントに俺達と同じ人間だと思うか?」
今も姿を現す怪物を銃で打ち抜きながらもカロジェロがそんな
「御本人は、そう
「今まではどうにか理由をこじつけられたが、流石にこれはな……」
カロジェロが言いたいことはわかる。このような超常現象。同じ人間に可能とは思えないから。
「それには同意するが、その結論によってお前は何か変わるのか?」
「いや、変わらないな、俺はグレイ様が人か否かなどどうでもいいし」
だったら聞くなとも思えるが、今や領主殿の親衛隊隊長を自称しているカロジェロにとって、あの御方が何者であるかなど、
「そろそろ到着するようだな」
引き戸の扉を勢いよく開くと、大広間が広がっていた。
そして、その奥に座る髭面の
「親父殿!!」
「総大将!!」
胸に釘を打たれたような衝撃が走り、直ぐにはらわたの煮え返るような怒りへと変わる。
そこには、王国に処刑されたはずの父の姿があったのだ。
「
父と同じ声色と同じ瞳でそんな意味不明な
「誇るがよいぞ。儂は羅生門第二番
「口を
カロジェロの激高! そして、その銃口から放たれた大気を引き裂く八つの紅の閃光が
次々に
「やれやれ、相変わらず人間という生き物は
あれが戦闘形態であり、戦闘能力は著しく上昇しているのだろう。だが、幸いにも懐かしい父の姿が視界から消え、むしろ幾分冷静になった。
「カロジェロ! この戦いだけは絶対に負けられん! いいな!?」
「当たり前だ。俺達で総大将を送ってやる!」
カロジェロも返答し、銃口を
あれほど容易に防がれたのだ。あのバケモノが
それでもやり遂げねばならないのだ。父はラドルの英雄にして、テオの理想。それをこれ以上、あんな化け物に汚させるわけにはいかないのだから。
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