第12話 ゴブリン襲撃事件勃発
私の意識は、深くて暗い闇の中を
そんな一筋の光すら差し込まない闇に
揺さぶられる身体に、重い
上半身を起こし、何度か頭を振ると、隣には
「これ、何の騒ぎ?」
「ついさっき、
このタイミングでの
平均能力値が、F+のセバスチャンなら、
「セバスチャンはいないんだね?」
「はい。あの悪い人達を連行していきました」
あの年寄会とかいう司祭の老婆共か。なんとも最悪なタイミングではないか。これでは、また、山神の怒りなどという
立ち上がり、サテラの頭をそっと
サテラは、真っ青な顔で全身を小刻みに震わせていた。
そうだな。最近、麻痺してしまってはいるが、子供にとって魔物とは恐怖の対象のはず。彼女のこの怯えも十分すぎる程、理由がある。
「サテラ、大丈夫、少し目を閉じていなさい」
素直に目を
さて、せっかく癒したのに、また怪我人が多数でたのでは、目も当てられない。
よほど恐ろしいのだろう。皆、野ねずみのように縮こまり、真っ青に血の気の引いた顔で
「聖人様、お目覚めになられましたか!」
名主が歓喜に
まったく、己の尻に火がついている現状で、子供の私に期待してどうする。バリケードを設置するなど、震える前にやることがあるだろうに。
「
奴らの所在を尋ねる。
「村門の前ですじゃ。数十匹にも及ぶ大軍です」
円環領域で村全体の状況分析を開始する。
村をぐるりと取り囲む無数の
確かにジュド達は一般の人間にしてはやるが、百を超える小鬼共相手では明らかにキャパオーバーだろう。現に、既に数匹は漏れてこの村内に入っているし。
ここも時間の問題だろうな。例え私が
「男達は家の付近の家具の一切をこの広場の周囲に運べ。女達は、弓と槍の用意だ。
バリケードごしに、近づいてきた
「で、ですが儂らは、戦闘の経験など――」
「死にたくなくば、四の五の言う前にやれ!!」
消え入りそうな声で、そんな
村の中心の大通りを走り抜けると、遠方に村を包囲するゴブリン共の軍勢が視界に入った。
小型の魔物とはいえ、百を超えればそれなりに
遂に頭から血を流しがらも、
ようやく、魔法の射程範囲に入ったので、右手の
「ギィ?」
ジュドにボロボロの剣を振り下ろす小鬼の右腕が根元から切断され、地面へ落下する。
噴水のように噴き出る自身の血液をキョトンした顔で眺めている小鬼の全身に無数の
惨状を目にし、ジュド達から、一目散で後退する小鬼共。私はジュド達の
「馬鹿者! 大軍に隊列を組んで立ち向かってどうする!」
「す、すまねぇ、大将、お、俺……」
ジュドの目の中にうつろう絶望の色は、どうしょうもなく私をざわつかせた。
「ついさっき、カルラが奴らに
ジュドの友人の女が泣きべそをかきつつも、最悪の報告をしてくる。
小鬼が、人間の女を攫う目的か。食料か、繁殖か。いずれにしてもろくなものではあるまい。早く救出せねば、手遅れになる。
「カルラは私が連れ帰る。お前達は、一旦、名主の家まで戻り、そこで障害物をつくって、弓で応戦せよ」
「弓で? でもそんなの、一度でも突破されたら……」
「突破されそうになったら、長槍で、応戦するんだな。仮に突破されたら、死ぬ気で殺せ。今、お前達が生き残るにはそれしかない」
この手の
まっ、小鬼共にイレギュラーがあれば、その限りではないが、それを言っても始まらない。
ジュドは下唇を
「大将、カルラを頼みます! お前ら、名主様のところへいくぞ!」
そう、叫ぶと皆を
さーて、これで思う存分、やりたいようにやれるな。時間もないし、とっとと殺すとしよう。
「ギイイイィィ!!」
間合いをとりながらも、私を包囲する一〇匹程の小鬼の群れ。奴らの及び腰の姿からは、一応、危機感を感じられる程度の知能はあるらしい。
もっとも――
「無駄だがね」
「【
私が言霊を紡ぐやいなや、半径数メートルにも及ぶ炎の柱が正面の三匹の小鬼の真上に降りていく。嗅覚を刺激する肉の焼けこげる匂いと、ジュという蒸発音。残されるは、サラサラと重力に従いゆっくり落下する
次いで、両手を伸ばし、【
一メートル程もある炎の紅の球体は、回転しつつも小鬼目掛けて
「グギィ!!」
恐怖のたっぷり含まれた
先頭をひた走る小鬼に、巨大な大剣が
「ニゲルナ! ニゲレバコロス」
それは、二メートルを優に超える巨体の鬼。あれが、
「ほう、人語を理解するか」
それは実に都合がいいな。
「ニンゲン、ウンガナカッタナ、オデニハ、マホウはキカナイ」
勝ち誇ったように、
「なら試すことにしよう」
私は【
奴の魔法防御を司る魔力耐久力は、F+。確かに、少し前の私なら多少、分が悪かったかもしれん。
だが、つい最近、私の魔力はE+へと昇格した。魔力耐久力F+など問題にすらならならない。
「イカナルマホウモ、ワガ、ツヨキヒフヲ、キズツケルコトハ――」
自慢げに宣う奴の言葉を待たずに、【
瞬時に、火柱がその両腕を根元から炭化させてしまう。
「グオッ!? オ、オデノ、ウデッ!!?」
間髪入れずに、地面に両膝を付き、苦しみ悶える
みたところ、こいつはゴブリン共の中では幹部クラス。こいつを使って、奴らの
だが――。
「ふむ、他はいらんな。全て殺処分だ」
「グギイイッ!!」
私の言葉が通じているのかもしれん。
私は、円環領域で逃亡を図るゴブリン共の全てをLock Onし、【
キィーン!
「……」
地面に今も両膝をつき、息絶えたゴブリン共の
私は奴にゆっくりと近づくと、
「さあ、デカブツ。ゲームをしよう。三〇数えるまで私は追わない。精々、私から逃げきってみせよ」
その耳元で、そう
「ギガッ!!」
もはや、人語を話すことすら止め、僅かに生き残った小鬼共を吹き飛ばし、
円環領域を全開にし、今も必死の
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