8-6

 私がそう言い終えた時、イーヴィルの意識レベルを計測していた機器に変化が見られた。少しずつ数値が上昇し、身体も徐々に動き始める。私達は急いでイーヴィルの顔を覗き込み、閉じられていた目が開いて私とクライシスを確認するように見つめている。


「調子はどんな感じだ?」


「最悪だ。身体が常に重たい」


「エネルギーの循環は?」


「もう自分でできる」


「わかった。オースティン、補助装置を切ってくれ」


 そう言われ、イーヴィルに繋がっていたエネルギー循環を補助していた装置の電源を切る。エネルギーとなる液状のデルタ粒子がチューブを伝ってイーヴィルの体内に全て戻った時、余計なチューブを抜いてやると彼はゆっくりと上半身を起こした。一時的に装着された初期型の腕に違和感を感じたのか手を握ったり開いたりを繰り返す。


「痛みを感じないはずなのに、あれを使った後、耐えがたい高熱で腕が焼け落ちそうだった」


「完全に融解していた」私は作りかけの腕を顎で示す。「新しい腕が完成するまでそれで我慢してくれ。もう少しの辛抱だ」


「早くしてくれよ。やらなければいけないことは山のようにある」


「そう急かすな。少しは身体を労わってやれ」


「暢気に休んでる暇なんてないぞ」調子が戻ったイーヴィルは厳しく言い放った。「アルバを内部から潰す方法を模索して、奴らの支配を終わらせなければ」


 私達に安息などない。そう断言された瞬間だった。

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