メタル・グリム・リーパー
宮崎 ソウ
第一章 生身を捨てて何を思う
1-1
私は死んだ。ひっそりと金属の塊になった。
このことは誰にも言わなかった。一人の親にも、恋人にも、私が忌々しい存在になったとは決して知らせなかった。直接言わなくとも二人は私が帰らないことを不思議だと思わなかっただろうし、何度もそういう話をしていたので、私がどうなったのかすぐにわかったはずだ。
機械のごとく無感情で冷めた目をして、殺戮のために武装化された両手足、乱れることのない一定の呼吸音が聞こえてくるマスクを装着した私はもはや二人の知る人物ではなく、永遠と戦いに身を投じる兵器である。ただ、私が金属になることについて、二人とも理解を示していた。忌むべき存在としてではなく、守護する者として二人は私を受け入れてくれた。だが、周囲から向けられるものは違った。
何も残らない。賞賛の言葉も名誉も与えられない。彼らを脅威から守っているのに、彼らからは感謝の一言もない。人ならざる私達に対し、彼らは非難する能しかなかった。
しかし、私は例え自分自身が彼らの敵とみなされようが、どんなに罵声を浴びようが、そんなものどうでもよかった。私はただ、あえて危険と接し、父が行っていた『研究』について知ろうとしていた。この身体がその事実を知る上で手っ取り早かったのだ。
父は生物兵器を主としていた『バベルストローム』という企業の研究員で、極秘の研究を行うチームの責任者をしていたと母から聞いた。その極秘の内容とは、金属生命体、通称・ジンと呼ばれる存在を生み出すこと。父が率いるチームは見事にそれを達成したが、おかげで世界は崩壊寸前にまで追い込まれたのは言うまでもない。奴らは生みの親さえも予測不可能な力を発揮し、瞬く間に文明そのものを破壊したのだった。
それ以降、人間は常にジンの存在に怯え、ジンから守護してくれる絶対都市『アラランタ』内で生活を営んでいる。まるでスラム街のように暗く、空気汚染からも逃れるために天井も閉鎖、地上にいながらも常時地下に滞在しているような感覚だ。
そんな中、過去の遺産である超科学の知識を用いて作られたのが、対金属生命体のサイボーグ。生きた人間の記憶をデータとして取り出し、専用の金属の身体へ移植される。そうしてジンに対抗する兵器は作られ、数人が一つのチームとしてジンを撃退することになるのだ。
人らしさは完全に失われてしまう。感情こそ残るものの、それらを表現する術がなくなると言った方が正しい。青白い人工皮膚は表情を作ろうともしないし、金属製の眼球からは涙という液体は流れない。何も知らない人々は私達を非情だと言い、いつの間にか巷でこう呼ばれるようになっていた。
奴らは『金属の死神』だ、と
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