愛情の3乗分の表現

@yukikago

第1話 プロローグ

愛してるよって、伝えるのは難しくない。

5文字打ち込むだけでいいし、

6文字発するだけでいい。


でも、愛してるよと気持ちを伝えるのは難しい。

恥ずかしいし、言って変に気を遣わせるのは嫌だ。

だから少しでも気持ちを伝えるために、付け足し付け足し、気持ちを言葉で表現してるんだ。


これを方程式で表現すると、愛情の3乗分に相当するんだと思う。




冬、受験シーズン真っ只中。

満員電車の中、むさ苦しさが襲いかかる。

通勤、通学、えとせとら。

彼らがゆく先は様々だろう。

私も、またそのうちの一人。一般的な男性。

スマホにイヤホンを差し込み、流行りの音楽を聴く。

こう、社会人になってまだ数年だが流行って馬鹿みたいに一瞬で終わる。

仕事がひと段落すると2、3個は知らないものが増えている。

それを追う度に、また別のものが流行りいつも置いてけぼりだ。


電車の窓辺から景色が流れる。

まさに、こんな感じ。

流れ流れては、別の景色になる。


あー、まあそれもいい。 と思って、客観的な感想でその気持ちをしめる。


さて、そうこうしている内に会社の最寄りだ。

今日も頑張ろう。



仕事の終わり。

帰り道に自販機で買った150mlの炭酸ジュースを飲む。

疲れた身体に炭酸が入ってまるでポンプで空気を全身に巡らせたかのように活力が湧いてくる。


受験を終えたであろう学生が和気藹々としている。

人混みに紛れて、私は人通りの少ない道へと進む。

疲労とちょっとした達成感で、人気のない公園に着く。

正午辺りは、小さな子供が遊んでいただろうそこに、大の大人が炭酸ジュース片手にベンチに座る光景は、今のご時世では通報されかねないのが辛い所だ。


ひと息つく。

タバコは吸わないが、タバコを吸う人の気持ちになって一服と言ってみる。

誰もいないそこに、いつもなら誰もいないはずの公園の真ん中で、私はーーー。


その人に出会った。

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