15

「先輩、舌を出していただけますか?」

「こっ、これでいいの?」


 少しだけ躊躇いがちに、先輩はちろっと唇から舌先を覗かせた。


「ありがとうございます先輩。ただ、もう少し伸ばせませんか?」

「こ、こう?」

「もっとです。ほら、こうやって」

「んひっ!?」


 先輩の舌先に指先を這わせる。

 指先にねっとりとした唾液が付着して温かい。


「先輩、私の指を舐めてみてください。その可愛らしい舌で。私の指をしゃぶっていただけますか?」

「……ん、んちゅっ……れろ」


 先輩の舌が指先をくすぐる。

 ぎこちない動きはこそばゆくて、思わず頬が緩んでしまう。


「はい、その調子です。そのまま指を離さないようにしてくださいね?」

「んぅっ……ちゅっ……」


 指先を少しずつ引いていくと、つられて先輩の舌も着いてくる。


 やがて先輩の舌が限界まで伸びきって、指に付いてこれなくなって。

 指先と舌先の間に糸が引いて、先輩が思いきり舌を出した格好になった。


「はい、ありがとうございます先輩。とても上手なおねだりでしたよ?」

「へ!?」


 引っ込もうとする先輩の舌を逃さないように、すかさずその唇にキスをする。


「んっ!?」


 先輩の舌を唇で挟み込んで、口の中に吸い込む。

 少し意地汚い音が室内に響いてしまったが、これで先輩を私の中に捕らえられた。


「んっ、ちゅっ……んっくっ……」

「ふ、ふぁ、あふ、んぅっ」


 先輩は私の肩をぎゅっと握りながら、懸命に舌を伸ばし続けている。

 気持ちよくしてほしいと懇願するかのように。


 伸びきった舌を擦り上げ、舐め上げ、舌先から落ちる雫を絞り出す。


 やがて先輩の舌が緩んで引っ込もうとしても逃さずに。

 先輩の唇まで巻き込んで、一方的な愛を伝えていく。


「んぅっ、はぁっ、んむぅっ!」


 先輩の嬌声が私の口内に響く。

 その喘ぎ声をちゃんと聴けないのは残念だ。

 でも、これは先輩が恥ずかしさに耐え、素直に感情を吐露してまで臨んだキスなのだ。

 その期待にはしっかりと応えるのが後輩としての役割だろう。


「んぁっ、ふっ、んくぅっ……!」


 やがて先輩の力が抜けて、私の舌の動きに合わせて小さく痙攣することしかできなくなって。


 そうしてようやく、私は先輩の唇から離れた。


「んっ……さ、先輩。飲んでくださいね?」

「んっく、……んっ」


 先輩の中に舌を差し入れて、その口内に私と先輩が混ざり合った液体を流し込んでいく。

 先輩は流されるままにそれを嚥下していって、こくこくと喉を鳴らした。


「先輩、私の口内を舐め上げて全部飲んでくださいね? それがディープキスですから」

「ん、うん……」


 先輩は私の嘘を信じたのか、もしかしたらもう頭が働いていないのかもしれない。

 ぎこちなく、ゆっくりとその舌を私の口の中に入れ込んだ。


 私の口内が先輩の舌に擦られ、なぞられ。

 先輩はかき集めた粘液を言われるがままに嚥下していく。


 先輩からのキスは、あまり気持ちよくはない。

 あまりに動きが拙いから。


 それでも、とても暖かくて幸せだった。


「んっ、ふっ……はい、お疲れ様です先輩。じゃあ最後に全部ごっくんしてください」

「こくっ……ん」

「上手にできましたね。それじゃあ先輩のお待ちかね……いきますか?」

「っ……!」

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