親の威を借る子
「オレは、どこまでもズルで、傲慢で、その癖無力なやつだった。親の威で見られていた夢を自分の夢だと勘違いして、その夢に自分を投げていった。そして現実のほうはおろそかになっていったんだ。
あの時の夏のライブを終えたとき、口座に入ってくる親からの援助金を見て、ふと思ったんだ。
「オレはこのお金のおかげでこの夢を見れている」ってな。
それ以来オレはなんとかして親に頼らずにお金を工面しようと思った。でもそこで取った手段が間違いだった。オレは怪しい儲け話に乗ってしまったんだ。普段なら一笑するような話を、自分の金で夢を見続けたいと思って...
オレは大金を失ってしまったんだ。
そこでバイトに入るなりして、時間を売って地道にお金を稼いでいけばよかったのかもしれない。
でもオレは現実のほうで生きていけるほどの力がすでに残っていなかった。バイトをする気にもなれなかった。当時は髪を染めていたし、バイトのためにこれを捨てるなんてまっぴらだと思ってたよ。
そう思った瞬間...オレの夢は終わったようなものだった。だって金を自ら稼ぐ手段を全部破棄したんだから。
夢にも、現実にも生きることが出来なくなった。そんなタイミングでオレは死んでしまったけど、今になって考えると良かったのかもしれない。無駄に生き長らえる必要もなくなったんだから。
オレは、死ぬことで救われたのかもしれない」
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