家ではお兄ちゃんとすり寄ってくる妹への告白を目撃したら、小動物系の幼馴染が告白してきた件
滝藤秀一
第1話 妹が告白されるのを目撃してしまった
その日、俺は初めて妹が告白されているところを見てしまった。
「ずっと前から好きでした」
「ありがとう嬉しいです。でも、ごめんなさい!」
放課後、人気のない校舎裏。
そこで妹と男子生徒が向かい合っていた。
妹の顔には、いつも教室で見かける明るく快活な笑顔はなく、あははと乾いた笑いを浮かべて頭を下げている。
目撃したのはたまたまだった。
掃除当番のゴミ出しに来て、まさか実妹の告白シーンに出くわすなんて、誰が予想出来る?
「あ、あぁあぁあき君、あき君! は、
「見ればわかる。そんなことって本当にあっ……って、おいっ! あぶねえ、ゴミ袋を振り回すな」
「わぁ、しかもあの先輩、女子の間で有名な人だよ?! たしかサッカー部の人! うわぁ、うわぁ、うわぁ!」
「いや、わかったから……」
隣に居る幼馴染は、動揺してなのか、手に持つゴミ袋を振り回す。
嫌な感触が足にぺしぺしと当たる。
確かに妹のこんなシーンを目撃して俺も動揺したが、自分以上に興奮している人を見ると返って冷静になっていた。
もう一度妹の方に視線を移す。
「何故?! 足りない部分があるなら……」
「いまは誰とも付き合う気が――」
妹はなおも食い下がる男子に、丁寧に断りを入れていた。
相手に真摯に応えている姿は、傍目にも気立てのよさが見て取れる。
――けど、アイツの目元は笑ってないし、口もちょっと尖っている……頑張って頑張って猫を被ってるな……
「一橋さん、僕も言っておきたいことが」
そんな事を考えていると、更なる
手にはどこで摘んだのだか花を一輪添えてある。
ネクタイはきちんと結ばれ、清潔感のある身だしなみ。今度は見た目紳士的な人だった。
妹も先ほど告白した人も、少し口を開け一度瞬きをし驚いている。
「ふぇっ?! あれってもしかして順番待ち?! す、すごい……」
「マジかよ……」
さすがの現実離れした光景に、俺と幼馴染の思考は追いつかず呆気に取られる。
お互い間抜けな顔を晒して頷きあった後、最後まで見届けずにその場から逃げるように退散した。
去り際に妹がこちらに気が付き、助けを求めるような視線を向けてきた。
直訳するなら、
『お兄ちゃん、知らない人に言い寄られているんだけど、た・す・け・て!』
無理だという意味で俺は少し大げさに首を振った。
その後、教室で鞄を取って帰路に着く。
「……」
「……」
気まずい空気が流れていた。
俺と幼馴染ということは、妹とも幼馴染ということだ。
昔から良く知った仲だし、家族よりも色々知っているかもしれない。
だから、
妹の
しかも同じ双子とは思えないほどに成績優秀、スポーツ万能。
おかげで兄貴の俺には、恋の相談やらを持ちかけてくるクラスメイトもいた。
夕暮れが俺たちの影を伸ばす。
この日の衝撃はまだ終わりを告げていなかった。
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