夢と幻想と環状の繋ぎ目⚓
春嵐
01
ゆっくりと、歩く。
環状道路の、歩道。
ここは、わたしの住む街、その外縁をぐるっと繋ぐ重要な道。そして、車ばかりが通っている。
この道路に歩道があることを、ほとんどの人が知らない。わたしだけの道。心がくるしくなると、いつもここを歩く。
環状だから。どこにも行けないし、どこにも辿り着かない。元来た場所へ戻るだけ。それに、歩きでは。どうやっても一周なんてできない。
恋人が、消えた。
ただ恋愛が終わったのだと、なんとなく思った。初恋だった。お互いに好き合っていて、ずっとこのままだと。そう思っていたから。いなくなったとき、衝撃よりも先に、夢から覚めたような感覚があった。ああ、幸せな夢だった。起きてごはんを作らないと。そう思ってしまった。恋人の不在を、受け入れて。その瞬間から、ひとりで生きて。
「なんて薄情な」
ひとりごとは、通る車がかき消した。タイヤが道路を踏みしめる、低くて落ち着く音。
「わたしは」
どうしたいのだろう。
こんな、環状道路の、誰も知らない歩道で。ひとり歩いている。遠くに街のネオンが見える。星空も。ネオンの明るさがあるのに、星空は満天で綺麗。流れ星も時折流れていく。
きれいな景色なのに。わたしはまだ、ここにいる。恋人を失ったまま。
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